朝乃山

九州場所、朝乃山の連勝ストップと大関経験者としての苦悩：6連勝で見えた「相撲の本質」とは

大相撲の九州場所、福岡国際センターで繰り広げられている熱い戦い。9日目現在、十両の土俵でその名を轟かせているのが、元大関・朝乃山（あさのやま）の健闘だ。かつては大関の地位にまで上り詰めた彼が、十両での再起を賭けて挑んだこの場所、6連勝の好調で首位を快走していた矢先、ついにその連勝のピリオドが打たれた。

この「6連勝で止まる」という結果は、単なる数字の停止ではない。それは、大関経験者という肩書きと、現在の彼の実力、そしてこれから目指すべき幕内復帰という目標の間で、彼がどう葛藤しているかを如実に物語る一大イベントだ。本日、9日目の結果を振り返り、その土俵裏で何が起こり、彼が何を感じ取ったのか。そして、この敗戦が彼の今後の行方（ゆくえ）にどのような影響を与えるのか。最新の公式ニュースを基に、深く掘り下げて分析する。

九州場所9日目、6連勝の星が消える瞬間

11月17日、九州場所9日目。十両の土俵には、元大関・朝乃山の姿があった。前日の8日目まで、6連勝の快進撃を続けていた朝乃山は、この日、新入幕の若手・日翔志（ひなし）と対戦した。序盤は互角の攻防が続くが、朝乃山は日翔志の巧みな技に翻弄され、土俵際で形勢を逆転されて敗れた。これで、朝乃山の勝ち星は6勝3敗となった。

この敗戦について、朝乃山本人は「相手の技術に引っかかった」と語っている。単純な力勝負ではない、技巧のぶつかり合いの中で、若手の鋭い攻めを許した形だ。この一言には、かつて大関として君臨した存在が、十両の若手相手に油断ならない戦いを強いられたことへの自覚と、悔しさがにじんでいる。

公式発表より引用： 「朝乃山、6連勝で止まる 初顔合わせの一番は「相手の技術に引っかかった」 幕内復帰へ正念場続く」 - au Webポータル

この敗戦は、単なる連勝の終焉にとどまらない。この日、朝乃山は9日目にして初めて白星を逃し、6連勝の記録が止まった。この結果は、Yahoo!ニュース（日刊スポーツ）でも「朝乃山は連勝「６」で止まり勝ち越し王手お預け」と報じられており、単なる一敗が、彼の首位争いへの道筋にいかに大きな影を落とすかを示唆している。

「これが相撲なんで」：大関経験者・朝乃山の切実な本音

この敗戦で、特に注目すべきは朝乃山の心境の変化だろう。東スポWEBの記事では、彼の次のようなコメントが引用されている。

公式発表より引用： 「【九州場所】大関経験者・朝乃山が日翔志の肩すかしに屈して３敗目「これが相撲なんで」」 - ｄメニューニュース

「これが相撲なんで」という言葉は、重い。これは、土俵の厳しさ、勝負の世界の過酷さ、そして、かつての栄光と現在の立場のギャップを、痛感した彼の本音だろう。6連勝で首位争いをリードしたからといって、安泰ではない。わずか一敗で、首位との差は2差に広がり、勝ち越しも「王手お預け」という状況に追い込まれた。

この発言から、彼が十両の土俵においても、決して楽な戦いではないことを肌で感じていることが伝わってくる。むしろ、元大関としての誇りと、現在の実力不足を痛感する葛藤が、この一言に凝縮されている。

優勝争いへの影響と展開の変化

朝乃山が6連勝で止まったことは、単に彼一人の記録の停止では終わらない。十両の優勝争い全体の展開を大きく揺るがす結果となった。

Yahoo!ニュースの記事（日刊スポーツ）によれば、朝乃山はこの敗戦で6勝3敗となり、首位争いからやや後退した。現在、十両の首位には、朝乃山を含めた複数の力士が並んでいるが、彼の6連勝が止まったことで、首位との差は「2差」となった。この敗戦がなければ、単独首位で優勝争いをリードし続けられた可能性が高い。

この結果、朝乃山の「幕内復帰」への道のりは、ますます困難さを増した。彼は元大関であり、当然の如く幕内への復帰を目指している。しかし、十両での優勝や安定した成績が、幕内復帰への必須条件となる。わずか一敗が、優勝争いの行方を大きく左右し、ひいては彼の将来的な地位向上にまで影響を及ぼす可能性がある。

元大関という肩書きの重みと再起の道のり

朝乃山の現状を理解するために、彼の経歴を振り返ることは不可欠だ。朝乃山は、北海道・沼田町出身で、元大関・千代白（ちよしろ）を親方とする湊部屋所属の力士である。2019年11月場所で新入幕を果たし、2020年1月場所では13勝2敗の好成績で敢闘賞を獲得するなど、急速に頭角を現した。そして、2020年9月場所で大関昇進を果たした。

しかし、大関の地位は厳しく、2021年11月場所を最後に大関から陥落。その後、怪我や不振に苦しみ、十両での沉浮が続いている。かつては「大関朝乃山」として土俵をにぎわせた彼が、今、十両で再起を図っている。この背景には、選手生命を賭けた彼の執念がある。

九州場所での彼の位置づけ

この九州場所、朝乃山は十両13枚目で迎えた。かつて大関だった力士が、十両のこの位置にまで下がるには、相当の苦労があったはずだ。しかし、彼はこの場所、序盤から好調を維持し、6連勝という快挙を達成した。これは、彼の実力が依然として衰えていないこと、そして、大関時代の技術が生きていることを証明するものだった。

しかし、9日目の敗戦で、彼の苦闘が再び表面化した。日翔志のような新入幕の若手相手にも、互角以上の勝負を強いられる十両の過酷さが、この一戦で如実に示された。

九州場所の土俵で見せる、朝乃山の強さと課題

この九州場所、朝乃山が見せている強さは、単なる力勝負ではない。彼の相撲は、足腰の強さと、相手の動きを読む巧みな技が特徴だ。6連勝中、彼は序盤から主導権を握り、土俵際での粘りも光った。