ウマ娘
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ウマ娘訴訟:サイバーエージェントが特損7億2700万円計上、コナミとの特許権侵害問題の行方
2025年11月17日、ゲーム業界に衝撃が走った。サイバーエージェント(CyberAgent)が発表した2025年9月期第2四半期決算短信の内容が、その原因だ。特に注目を集めたのは、アズーゲームス(Cygames)が開発・運営する超大ヒットタイトル『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、ウマ娘)に関連する損失である。
同社は、コナミデジタルエンタテインメント(以下、コナミ)との間で係争中だった特許権侵害訴訟の和解成立に伴い、特別損失7億2700万円を計上したことを公表した。
このニュースは、単に巨額の損失として話題になっているだけではない。日本を代表するゲームタイトルと、老舗大手メーカーとの知的財産権を巡る争いが、どのような形で決着を見たのか、そしてその影響はどこまで及ぶのか。多くのプレイヤーや投資家、そしてゲーム業界関係者が注目している。
本記事では、特に信頼性の高いITmediaやYahoo!ニュースなどの報道を基に、『ウマ娘』訴訟問題の真相、損失の内訳が明かされない背景、そして今後のゲーム業界に与える影響について、詳しく解説する。
事件の核心:7億2700万円の特別損失と和解の事実
まず、最も重要な事実から押さえよう。サイバーエージェントが公表した決算資料によれば、同社は2025年9月期第2四半期において、営業利益が前年同期比で大きく減少している。
その主な原因とされたのが、アズーゲームスとコナミの間で行われていた訴訟の和解である。
なぜ今、損失が発生したのか?
訴訟そのものは、実は以前から行われていた。コナミは、アズーゲームスが開発・販売する『ウマ娘』が、自社の特許(競馬ゲームにおける特定の演出やシステム)を侵害していると主張し、販売差し止めと損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起していた。
しかし、2025年11月の決算発表時点で、両社は和解に至った。この「和解成立」という事実が、サイバーエージェント側に特別損失をもたらした。
引用:ITmedia NEWS 「サイバーエージェントは17日、2025年9月期第2四半期の決算短信を発表した。アズーゲームスとコナミデジタルエンタテインメントの間で係争中だった特許権侵害訴訟が和解により成立したことを受け、特別損失7億2700万円を計上した。」 (出典:ITmedia NEWS)
和解金の性質
特別損失として計上された7億2700万円は、おそらくコナミへの和解金や、それに付随する法務費用、ライセンス契約に関する支払いなどであると推測される。
しかし、最も注目されているのは、サイバーエージェントが「内訳は明かさず」としている点である。これは、単なる会計処理上の都合なのか、あるいは今後のゲーム開発やコナミとの関係性に影響を与える特別な契約が含まれているのか、判断が分かれるところだ。
訴訟の背景:「ウマ娘」と競馬ゲームの知的財産権
なぜ、『ウマ娘』はコナミと訴訟になるほどの特許侵害問題に関わったのか。その背景には、ゲーム業界における「特許」の取り方の特殊さがある。
コナミが持つ「競馬ゲームの特許」
コナミは、長年にわたり『ダービースタリオン』や『WINNING POST』といった競馬ゲームを手掛けてきた。これらは、単に馬を走らせるだけでなく、育成や繁殖、血統管理といった深いシステムを誇る。
コナミが保有する特許は、こうした競馬ゲームにおける「データ管理方法」や「演出」にまでも及んでいる可能性がある。
『ウマ娘』は、競馬の馬を擬人化(美少女化)してキャラクターとして魅力を描くという、前所未聞の発想で大ヒットした。しかし、そのゲームシステムの根幹には、育成ゲームとしての要素が含まれている。コナミは、その一部が自社の特許技術に抵触すると主張したのだ。
「ウマ娘」はコナミの流れをくむ?
実は、アズーゲームスには、かつてコナミで競馬ゲームの開発に携わっていたスタッフが多数在籍している。特に、『ダービースタリオン』の生みの親である石渡太輔氏(※当時の所属はコナミ)は、アズーゲームスの設立に深く関わっている。
この経緯から、『ウマ娘』が「競馬ゲームのノウハウを継承している」という見方もあった。しかし、ノウハウの継承と、特許権の侵害は別問題である。コナミは、独自に取得した特許権を行使した形だ。
決算への影響とサイバーエージェントの対応
7億2700万円の特別損失は、決算数字上、無視できない金額だ。しかし、サイバーエージェント全体から見れば、致命的な打撃とは言えない可能性が高い。
大きな利益を出し続けるウマ娘
『ウマ娘』は、発売以来、驚異的な売上を記録し続けている。特に、スマートフォン向けアプリ版は、キャラクターの魅力と定期的なアップデートにより、高いユーザーの囲い込みに成功している。
サイバーエージェントの連結決算では、アズーゲームスのゲーム事業が大きな柱の一つとなっているため、7億円程度の損失は、一時的な出費に過ぎないという見方もある。
会計処理のポイント
特別損失として計上する理由は、和解金を「通常の営業活動による支出」として扱うのが適切ではないからだ。一度きりの大きな支出(又は収入)は、本来の事業利益から切り離して評価する方が、企業の本質的な価値を正確に評価できる。
サイバーエージェントは、第2四半期決算では営業利益で前年同期を下回ったが、最終利益(経常利益)では、為替差益などの影響で予想を上回る結果となったケースも多い。つまり、7億円の損失は痛手だが、事業そのものの健全性を損なうものではない、という判断がなされている可能性が高い。
今後の展望:ゲーム業界に与える波紋
この和解成立は、単なる一つの訴訟の決着として片付けられない意味を持つ。なぜなら、今後のゲーム開発、特に「既存の要素をアレンジして新しいゲームを作る」というクリエイティブな行為に、影を落としかねないからだ。
特許の壁とクリエイティビティ
ゲーム業界では、特定の「遊び方」や「システム」に特許を取得し、他社の参入を阻む動きが昔からあった。『ウマ娘』訴訟は、その最た