存立危機事態とは

存立危機事態とは？意味や定義、国会での議論を徹底解説

「存立危機事態」という言葉を耳にしたことはありませんか。近年、安全保障や台湾問題を巡る国会審議で、その存在が度々議論の的となっています。一体、これはどのような状況を指す言葉なのでしょうか。

本記事では、「存立危機事態」というキーワードに焦点を当て、その法的な意味定義から、実際に議論された政治的背景、そして今後の日本に求められる選択について、専門的な視点から分かりやすく解説します。

なぜ今、「存立危機事態」が注目されているのか

2025年11月、国会議事堂では、与党と野党の間で激しい論戦が繰り広げられました。焦点は、政府が示す「存立危機事態」の解釈。特に、台湾有事などが引き金となる「存立危機事態」に関する政府見解を巡っては、与党のトップである高市首相に対する厳しい質疑が相次ぎました。

石破前首相（当時）: 「台湾問題の断言、これまで避けてきた。存立危機事態に至るかどうかも、政府として明確に答えるべきだ」

毎日新聞の報道によれば、石破前首相は、高市首相に対し、台湾有事が日本の存立危機事態に該当するのかどうか、明確な答弁を求める発言をしました。この発言が、改めて「存立危機事態」という言葉の重みと、その解釈の難しさを世の中に知らしめる結果となりました。

この言葉が注目される背景には、北東アジアの安全保障環境の激変、そして日本の防衛政策の転換期にあるという事情があります。一体、この言葉が持つ意味とは。

「存立危機事態」とは？その定義と法的根拠

まずは、この言葉の基本的な定義から紐解いていきましょう。「存立危機事態」とは、文字通り「日本国の存立が危機に瀕する事態」を指します。

この言葉が政界で頻繁に使われるようになった背景には、2015年に成立した「安保関連法（平和安全法制）」があります。この法律では、日本の存立危機事態を以下のように定義しています。

存立危機事態（平和安全法制より）: 「日本国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本国の存立が著しく危機に瀕し、国民の生命、身体、財産が極めて重大な被害を受ける可能性があると内閣が認定する事態」

一言で言えば、「同盟国等が攻撃された結果、その影響で日本が攻撃されるリスクが極めて高い状況」のことです。

存立危機事態と「武力攻撃事態」の違い

多くの国民が混同しやすい「武力攻撃事態」との違いを整理しておきましょう。

• 武力攻撃事態：日本が直接攻撃された状態。自衛隊が防衛出動を行います。
• 存立危機事態：日本は直接攻撃されていないが、同盟国（主にアメリカ）などが攻撃された結果、日本の平和と安全が脅かされる状態。この場合、日本は「同盟国を防衛する」ための活動（後方支援等）を行います。

この認定が下りれば、自衛隊は日本周辺だけでなく、遠く離れた場所でも米軍などを支援する活動が可能になります。その意味で、日本が「戦争に巻き込まれるリスク」をはらむ非常に重要な局面を指す言葉と言えるでしょう。

国会での論戦と中国の反応

「存立危機事態」が単なる法律論として片付けられないのは、それが具体的な国際情勢と直結しているからです。特に、台湾有事を巡る認識の相違が、大きな波紋を呼んでいます。

高市首相の発言とその背景

2025年11月の国会で、高市首相は台湾有事と日本の安全保障に関する認識を問われました。これに対し、一部報道では、高市首相が「台湾有事は日本の存立危機事態にあたる」との認識を示したと伝わります。あるいは、そのような認識を示す発言が、議論を呼ぶきっかけとなりました。

参考: 石破前首相は「（高市首相が）台湾有事などが日本の存立危機事態に当たるかどうかについて、『現状では断定できない』としてきた」と指摘。しかし、一方で、高市首相の過去の発言や姿勢を巡り、中国側が強い警戒感を示す事態に発展しました。

中国側の「激しい反発」

この一連の国会審議や報道を受けて、中国側は激しく反発しました。特に注目されたのが、在上海日本国総領事館前での抗議活動です。

一部メディアの報道によれば、中国総領事館前には「汚い首は斬ってやる」といった過激なビラが貼られる事態に発展。さらに、中国外務省は日本政府に対し、「悪辣な言論を直ちに撤回せよ」と要求する声明を発表しました。

中国がこれほどまでに反発する理由は、高市首相の発言が、日本の防衛政策の「ミサイルの照準」を台湾に定めるようなものと捉えているためです。中国は「台湾は中国の一部」と主張しており、日本の「存立危機事態」という概念が台湾有事に適用されれば、日本が軍事的に台湾に介入する可能性を視野に入れた「脅威」と認識しているのです。

背景にある日米同盟と日本の防衛政策

なぜ、政府はこれほど「存立危機事態」という言葉にこだわるのでしょうか。その背景には、日本の防衛政策の根本的な変更があります。

集団的自衛権と「存立危機事態」

従来、日本は「個別的自衛権」しか行使できないと解釈されていました。つまり、日本が攻撃されたときだけ防衛できるという考え方です。

しかし、安保法制の成立により、条件付きではありますが「集団的自衛権」、すなわち「同盟国が攻撃されたとき、日本が防衛できる」という権利が行使可能になりました。そして、この権利が行使できる具体的な局面が「存立危機事態」なのです。

これは、日米同盟を強化し、抑止力を高めるための措置ですが、一方で、日本が「戦争当事国」になるリスクを伴います。そのため、その発動要件である「存立危機事態」の定義を巡って、与野党、そして国際社会の注目が集まるのです。

「存立危機事態」がもたらす影響と今後の展望

「存立危機事態」という概念は、今後の日本社会にどのような影響を与えるのでしょうか。現在の状況と今後の見通しをまとめます。

現在の影響：外交的、国内的な緊張

まず、外交面では、中国との関係悪化が懸念されます。中国側は、日本が「存立危機事態」を口実に台湾に干渉することを強く警戒しており、今後も日本側の発言一つひとつに対して過敏な反応を示す可能性が高いです。

国内政治においては、与党と野党の対立が深まっています。石破氏のような政界の重鎮でさえ「政府の解釈が不明確」と批判する状