アスクル
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アスクルの現在地:サイバー攻撃がもたらした激震と再建への道筋
企業を揺るがした深刻な攻撃
法人向け通販大手のアスクルが、昨年秋に受けたサイバー攻撃の影響で、経営の根幹を揺るがす事態に直面している。2025年11月期の中間決算では、上場以来初めてとなる大幅な赤字に転落。システム障害への対応費用や販売機会の損失により、特損が52億円に上り、純損益は66億円の赤字となった。被害総額は120億円に及ぶと試算され、業績予想の取り下げや配当の見送りに追い込まれる事態に発展した。
この攻撃は単なるITインシシデントにとどまらず、同社の事業基盤そのものに深刻なダメージを与えた。経営陣が危機感を募らせ、顧客奪還のための値下げ攻略に打って出るなど、再建に向けた苦渋の決断が続いている。
事態の深刻さを裏付ける事実
決算への直接的な打撃
アスクルは2025年1月28日、昨年10月に発生したランサムウエア攻撃の影響を受け、2026年5月期第2四半期連結決算を発表した。この決算では、システム障害対応費用として52億1600万円を特別損失として計上した。
主要な財務指標は以下の通りだ。
| 項目 | 2025年11月中間期 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 純損益 | 66億円の赤字 | 前年同期は37億円の黒字 |
| 特別損失 | 52億円 | - |
| 中間配当 | 無配 | 前期は有配 |
特に痛ましいのは、上場以来初となる中間期赤字であること。同社の吉岡晃社長は「会社の事業そのものが揺らぐダメージがある。(120億円は)非常に大きな金額だ」と語り、危機感を露わにした。
業績予想の取り下げと配当方針
サイバー攻撃の影響が長期化する見通しを受け、アスクルは2026年5月期の連結業績予想を取り下げ、未定とした。これは、今後の業績を合理的に見積もることが困難であるとしたためだ。
配当面では、中間配当を無配とし、期末配当についても未定とした。経営陣報酬の減額も発表され、経営の緊迫感が伝わってくる。
攻撃の経緯と被害の実態
サイバー攻撃の発生と影響
アスクルが受けたのは、昨年10月のランサムウエア攻撃だった。この攻撃により、同社の法人向けECサイト「ASKUL」は一時停止に追い込まれ、受注処理が困難となった。
特に深刻だったのは、大企業や一部法人に限られていたファクスや電話による注文受付を、全顧客に拡大せざるを得なくなった点だ。Webサイトが復旧した後も、セキュリティ対策の強化と安全性の確認を徹底した上で、12月3日にようやく公式Webサイトでの注文を再開した。
被害総額120億円の内訳
アスクルが公表した被害総額は120億円。これは、単にシステム復旧費用だけでなく、販売機会の損失や顧客離脱による長期的な影響を含んでいる。
特損52億円の内訳は、主に以下の費用が含まれると考えられる。
- システム復旧費用
- セキュリティ対策強化費用
- ハッキング対応の外部専門家費用
- 業務停止による機会損失
事業基盤への影響と再建戦略
アスクルの事業モデルとその強み
アスクルは、オフィス用品・事務用品・文房具・オフィス家具、生活消耗品、事務機・OA機器、医療・介護・福祉用品、工場・物流・研究の現場用品、店舗用品など、約1,500万点の品揃えを誇る法人向け通販大手だ。
最短当日配送を可能にする物流ネットワークと、幅広い品揃えが同社の強みとして知られている。特に、医療・介護・福祉分野や工場・物流現場向けの専門用品に至るまで、多様なニーズに応える品揃えは、競合他社にはない強みだった。
顧客奪還に向けた値下げ攻勢
深刻な顧客離脱を防ぐため、アスクルはプライベートブランド(PB)商品の大幅値下げに踏み切った。利益よりも流出した顧客の回復を優先するという戦略だ。
この判断は、被害前の水準に戻るまでの道のりが険しいことを示唆している。しかし、価格競争力を高めることで、離開した顧客を取り戻し、事業の持続可能性を確保しようという意図がある。
企業としての対応と姿勢
経営陣の責任感
吉岡晃社長は「会社の事業そのものが揺らぐダメージがある」と語り、被害の大きさを認めている。経営陣報酬の減額は、この危機に応じた責任ある姿勢の表れと言える。
セキュリティ対策の強化
アスクルは、サイバー攻撃を受けてセキュリティ対策を強化し、安全性を確認した上でWebサイトを再開した。今後も継続的なセキュリティ投資が不可欠となるだろう。
サイバー攻撃が企業に与える影響の考察
企業のデジタル脆弱性
アスクルの事例は、デジタル化が進む現代社会における企業の脆弱性を浮き彫りにした。特に、法人向けECサイトのように、多くの顧客データや取引情報を扱うプラットフォームは、攻撃の標的になりやすい。
ビジネス継続性の重要性
サイバー攻撃により事業が停止した場合、その影響は単なるIT部門に留まらない。販売、物流、顧客対応など、全社的な業務に深刻な影響を与える可能性がある。アスクルの事例は、ビジネス継続性計画(BCP)の重要性を改めて示している。
今後の展望と課題
業績回復への道のり
アスクルは、業績予想を未定としている。これは、被害の全容が把握しきれていない、あるいは回復までの見通しが立たないことを意味する。
今後、同社が直面する主な課題は以下の通りだ。
- 顧客信任の回復: データ流出の懸念やサービス停止への不安を払拭する必要がある。
- 収益基盤の再構築: 値下げ攻勢
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