不適切にもほどがある キャスト
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阿部サダヲ主演SP「新年早々 不適切にもほどがある!」は“笑い”の向こう側に何を見せるのか? ハラスメント問題を軽やかに描く新作ドラマ
2026年1月4日、TBS系で放送された特別ドラマ『新年早々 不適切にもほどがある!』は、新年早々から大きな話題を呼んだ。阿部サダヲが主人公・市郎を務めた本作は、そのタイトル通り「不適切」な言動や行動を軸に展開するハートフル・コメディーだ。しかし、単なる笑い話で終わらせるわけではない。現代社会において「不適切」という言葉が持つ重みと、その裏側にある人間の本質を、巧みな脚本と演技で浮き彫りにした。
本作は、アカデミー賞作品『シェフの食卓』や『万引き家族』で知られる是枝裕和監督が手がけた『不適切にもほどがある!』(2024年公開)のスピンオフドラマとして制作された。同作は、1960年代から現代まで、不適切な言動を繰り返す主人公・市郎を通じて、時代の変化と「不適切」の定義の変遷をユーモア交じりに描いた。そんな市郎が、現代の東京で遭遇する出来事を描いたのが、この新春SPだ。
あらすじ:过去と未来を行き来する市郎、その先にあるもの
『新年早々 不適切にもほどがある!』のストーリーは、主人公・市郎(阿部サダヲ)が、自身が経営する「市郎商店」の店舗改装工事中に、奇妙な体験をするところから始まる。
工事の最中、ガス管をひっくり返した拍子に、市郎は過去(1960年代)や未来(2060年代)へタイムスリップする。過去では、妻・光子(蒔田彩珠)との出会いがあり、未来では、AIや高度なテクノロジーに支配された社会で、人々の温かさが失われていることに気づく。
そして、現代(2025年)に戻ってきた市郎は、自身の店を訪れた客たちに、次々と「不適切」な言動を浴びせる。しかし、その言葉の裏には、過酷な過去を乗り越えてきた者だけの愛情や気遣い、そして現代社会の抱える問題への疑問が込められている。例えば、女性客に対して「もっと太れよ」などと発言するが、それは戦争や貧困で食料に困った時代を知る者としての本心であり、現代の「細さ至上主義」への皮肉でもある。
キャストと役柄:個性派が織りなす不協和音と和解
本作の魅力は、なんといっても豪華なキャスト陣だ。阿部サダヲが演じる市郎を軸に、個性派俳優たちが織りなす掛け合いが見どころの一つだ。
主役・阿部サダヲ(市郎役)
阿部サダヲは、時代の移ろいの中で「不適切」を押し通す市郎を、憎めない存在として描ききった。彼の持つ不思議な魅力と、時に突き放すような言動が、視聴者の心を惹きつける。是枝監督作品でも共演経験のある阿部は、この役柄に最適のキャスティングと言える。
ヒロイン・蒔田彩珠(光子役)
妻・光子役は、蒔田彩珠。彼女は、市郎の暴走を静かに見守り、時に諌める重要な役割を担う。蒔田の落ち着いた演技が、市郎の激しいキャラクターとのバランスを絶妙に保っている。
その他・個性派キャスト
- リリー・フランキー(ヤマダ役): 市郎商店の常連客。市郎の言動に翻弄されながらも、彼の本質を理解する良き理解役。
- 松たか子(社長役): 未来の世界で市郎と出会う女性。高度なテクノロジーの中で失われた人間性を問う。
- 坂東龍汰(青年・市郎役): 過去の市郎を演じ、彼の生い立ちや光子との出会いを語る。
- 浅野忠信(謎の男役): 過去と未来を行き来する市郎の前に立ちはだかる、謎の存在。
「不適切」の向こう側に見えるもの:現代社会への風刺
本作が単なる「時代錯誤なおじいちゃん」の話で終わらないのは、市郎の「不適切」な言動が、現代社会の矛盾を照らし返す鏡として機能しているからだ。
例えば、現代では「ハラスメント」や「不適切」と一刀両断されかねない言葉も、市郎の口から出れば、それは「貧しい時代を生き抜いた者としての警告」や「人を心配する極めて人間的な感情」に見える。作中で阿部サダヲが語る「食うものがない時代の記憶」は、現代の豊かさの中で何事も失われつつある感覚を、軽やかに、しかし重く問いかける。
Yahoo!ニュースで公開されたスポーツ報知の記事でも指摘されている通り、阿部サダヲは「あれ、ちょっとハラスメントじゃないかな?」と自らツッコミを入れるような台詞回しで、視聴者に「これは不適切なのか?」と問いかける。その挑発的な笑いが、本作の核心だ。
「あれ、ちょっとハラスメントじゃないかな?」 — スポーツ報知(Yahoo!ニュース)より
なぜ今、このドラマなのか? ハラスメント問題との関係性
2026年現在、職場や学校での「ハラスメント」に関する意識は年々高まっている。SNSの普及により、少しの不適切な言動でも即座に炎上するリスクがある。そうした社会情勢の中で、『新年早々 不適切にもほどがある!』が投げかける問いは大きい。
「全ての不適切が悪か?」 「背景や意図を無視して、形式的に『不適切』と判断するのは正しいか?」
本作は、その答えを明確に提示するわけではない。しかし、市郎というキャラクターを通じて、私達に「相手の背景や意図を汲み取る余裕」や「時に『不適切』とされた言葉が、人の心を救うこともある」という多角的な視点を与えてくれる。これは、現代の「cancel culture(キャンセルカルチャー)」や「正義の暴走」への警鐘とも言える。
製作背景:是枝監督のスピンオフとして
本作は、2024年に公開された是枝裕和監督の映画『不適切にもほどがある!』のスピンオフとして制作された。映画は、1960年代から2020年代まで、市郎が各時代で起こす「不適切」な出来事を描いたヒューマンドラマだ。興行収入も好調で、特に若者層から支持を集めた。
是枝監督は、映画のプロモーションで「不適切」という言葉の定義の変化に興味を持ち、市郎というキャラクターを通じて、時代の移り変わりを表現したと語っている。その延長線上にあるのが、現代を舞台にしたこの新春SPだ。映画で描けなかった「現代」の市郎