尾上右近

尾上右近：新世代の歌舞伎役者としての魅力と、国内外へ広がる評価

はじめに：現代歌舞伎の花形、尾上右近

日本伝統芸能の一つである歌舞伎。その歴史は数百年にわたり、時代の変遷を経ながらも、今なお多くの人々に愛されています。そんな歌舞伎界において、近年、特に注目を浴びている若手スターがいます。それが、尾上右近（おのえうこん）です。

彼の名前がトレンドの上位に挙がる背景には、単なる人気だけではありません。伝統を守りながらも、新しい魅力で観客を惹きつけるその演技力と、歌舞伎界の「未来を担う存在」としての役割に、多くの関心が寄せられています。

本記事では、尾上右近の経歴、彼が演じる魅力的な役柄、そして歌舞伎界における彼のポジションについて、詳しく解説していきます。

尾上右近とは：基本プロフィール

尾上右近は、日本の歌舞伎役者です。彼の最大の特徴は、二つの名門の血を引いている点にあります。

出身と家系

彼は、六代目尾上梅幸（おのえばいこう）の実子として生まれました。尾上梅幸は、新派の名優として知られ、歌舞伎界とも深く関わりを持つ大人物です。しかし、右近は父の梅幸の養子となったのではなく、十代目松本幸四郎（まつもとこうしろう）の養子として歌舞伎界に入りました。

このように、歌舞伎界の二大名門「尾上家」と「松本家」の血と、その芸を受け継ぐ存在としての彼の立場は、非常にユニークであり、かつ期待の大きさを物語っています。

芸名の由来

彼が襲名した「右近」の名は、三代目尾上右近に由来します。この名は、歌舞伎界において非常に重みのあるものであり、彼がその名を継ぐことになったことからも、その実力と将来性がいかに高く評価されているかがわかります。

歌舞伎界での経歴と躍進

尾上右近のキャリアは、彼の若さとは思えない安定感と、常に上を向く成長曲线が特徴です。

初舞台と名題昇進

彼の初舞台は、2000年（平成12年）5月、歌舞伎座での『義経千本桜』でした。この時、彼はまだ数えの10歳でした。子役としての経験を積みながら、歌舞伎役者としての基礎を固めていきます。

そして、2016年（平成28年）11月には、歌舞伎座での『仮名手本忠臣藏』にて、名題（なだい）に昇進しました。歌舞伎役者の世界では、名題昇進は一人前の役者として認められるための非常に重要な節目です。この昇進により、彼は本格的に歌舞伎の主役級としての活動を開始しました。

近年の活躍

近年では、歌舞伎座の公演のほか、新橋演芸場での上演や、国立劇場での歌舞伎公演にも積極的に出演しています。特に、父である松本幸四郎や兄に当たる松本幸大（まつもとこうだい）との共演も多く、親子三代にわたる歌舞伎芸能の継承としての姿も見せています。

魅力の核心：尾上右近の芸風

彼がなぜ、これほど多くのファンから支持されているのでしょうか。彼の魅力は、いくつかの要素に集約されます。

1. 父・松本幸四郎との関係

彼は、十代目松本幸四郎の養子という立場にあります。松本幸四郎は、歌舞伎界を代表する大名題役者です。そのもとで修行を積んだ彼は、厳格な稽古を通じて、非常に高いレベルの技量を身につけました。師匠であり養父である幸四郎から受け継いだ「型」の美しさと、役作りへの真摯な姿勢は、彼の芸の根幹を支えています。

2. 美しい容姿と存在感

歌舞伎役者には、舞台の上で「顔」で見せる力、つまり美しさや威厳が求められます。尾上右近は、端正なルックスと、舞台上で引き締まる非常に良い体躯（たいく）を持っています。特に、時代もの（時代劇）における侍や公家、あるいは現代劇における主人公の役柄など、幅広い役を任せるのにふさわしい風貌は、彼の大きな武器です。

3. 演じる役柄の幅

彼は、感情を爆発させるような激しい演技から、繊細な心理描写まで、幅広い演技をこなします。 * 女形（おんながた）: 歌舞伎の白眉とも言える、女形としての魅力も発揮します。特に、『心中天の網島』や『おさんの恋』など、悲劇のヒロインを演じる際のその美しさは、見る者を引き込みます。 * 立役（たてやく）: 男性的な役柄、特に若侍や若旦那の役を演じる際の爽やかさも人気です。

注目作品：尾上右近が輝く舞台

彼の芸術性を理解するためには、具体的な舞台を知ることが近道です。彼の名を不動のものにした演目をいくつかご紹介します。

『髪結い الثالث』（かみゆいの third）

この狂言は、江戸時代の理髪店を舞台にした人情喜劇です。尾上右近は、主人公の一人である「お仙」役を演じることが多いです。お仙は、気の強いが心優しい小町娘。彼女の機転の利いた言動と、恋心を表現する繊細な演技は、彼の女形としての実力を存分に発揮する場となっています。

『心中天の網島』（しんじゅうてんのあみしま）

通称「天の網島」と呼ばれるこの作品は、江戸の sentimentality（感傷性）を極めた名作です。尾上右近が演じる「おさん」は、夫への深い愛情と、運命に翻弄される女性の悲哀を見事に表現しています。特に、ラストシーンでのその姿は、観客の心に強烈な印象を残します。

『助六由縁江戸櫻』（すけろくゆかりのえどざくら）

こちらは、歌舞伎の十八番（十八番）の一つです。尾上右近は、女主角の「揚巻（あげまき）」役を演じます。華やかで活発なこの役柄は、彼の舞台袖での派手な所作（厮見廻し）など、歌舞伎独特の見せ場が多く、彼の若さと元気ဩな魅力が光る演目です。

尾上右近と「歌舞伎界の未来」

現在の歌舞伎界は、 опыт豊富な大ベテランと、若手の台頭という、絶妙なバランスの上に成り立っています。その中で、尾上右近が果たしている役割は非常に大きいです。

伝統と革新の架け橋

彼は、歌舞伎の「型」を忠実に守りながらも、現代の観客、特に若い世代に受け入れられるような、新しい解釈を加えることがあります。例えば、台詞回しのリズムや、感情の表現方法に、現代的な感覚を取り入れることで、歌舞伎の敷居を下げることに貢献しています。

「親子三代」の継承

先述しましたが、彼の存在は「松本家・尾上家」という二つの名門の芸能の継承そのものです。祖父や父、そして兄との舞台は、歌舞伎の歴史そのものを体現していると言えます。この継承の物語自体が、歌舞伎ファンにとっての