少林寺拳法

少林寺拳法とは？その魅力と現在地：心と技を鍛える日本発の武道

「拳法」と聞くと、中国の少林寺をイメージする方も多いかもしれません。しかし、日本には「少林寺拳法」という、名前は似ていてもその源流と哲学を異にする、独自の武道が存在します。その起源は古く、戦国の時代にまでさかのぼります。近年では、その鍛錬法や哲学に注目が集まり、単なる格闘技を超えた「心身鍛錬法」として、再び見直されています。

本記事では、日本で発展を遂げた少林寺拳法の歴史、その核心となる理念「正拳正心」、そして現代におけるその意義や魅力について、最新の動向も交えながら詳しく解説します。

少林寺拳法の本質：「正拳正心」という理念

少林寺拳法の最大の特徴は、その哲学にあります。それは「正拳正心（せいけんせいしん）」という言葉に集約されています。これは、「拳（技）を正しく鍛えると同時に、心（精神）も正しく磨く」という意味です。

もともと拳法は、寺の僧侣たちが健康維持と護身のために修行した武術が起源とされています。その目的は、決して他者を倒すことではなく、自分自身の心身を鍛え上げ、より高い人間性を獲得することにありました。この理念は、創始者である宗道臣氏によって近代的に体系化され、今日に至っています。

少林寺拳法の基本理念は「正拳正心」。技の鍛錬と心の修養を一体として捉え、人間形成の道としています。

この哲学は、単なるスポーツや格闘技とは一線を画すものであり、今もなお多くの練習生を魅了する根幹となっています。

歴史の裏側：戦国時代から近代への道筋

少林寺拳法の歴史は古く、室町時代の戦国武将・三好長慶の家臣であった僧侶、玄々斎（げんげんさい）が、中国の少林寺拳法を日本に伝え、独自の発展を遂げたことに始まるとされています。しかし、その後は長く隠された存在であり、明治以降もその存在はほとんど知られていませんでした。

現代の少林寺拳法の基礎を築いたのは、宗道臣（むねみちお）氏です。彼は、戦後にこの拳法の系譜を継承し、その体系化と普及に生涯を捧げました。宗氏は、拳法の技法を整理するとともに、「正拳正心」の理念を掲げ、単なる護身術ではなく、人格完成をめざす武道として位置づけました。これにより、少林寺拳法は社会的に認知される存在となり、全国に支部が設立されるなど、飛躍的な発展を遂げたのです。

少林寺拳法の3つの柱：技・心・体の調和

少林寺拳法の技術体系は、大きく分けて3つの要素で構成されています。これらは互いに密接に関連し合い、一つの完成された武道を形作っています。

1. 基本動作（ソルレン）

全ての技の基本となる動きを繰り返す稽古です。これにより、体のバランス、柔軟性、瞬発力を養います。単なる型（かた）ではなく、実戦的な応用を想定した動きが組み込まれているのが特徴です。

2. 組討術（くみわざ）

投げ、関節技、絞め技など、相手と組んで行う技術です。柔道や合気道に似た側面もありますが、より実戦的な状況を想定した構成になっています。護身術としての効果も非常に高いとされています。

3. 突拳法（とっけんほう）

主に打撃技を中心とした技術体系です。拳、掌、足を使った攻撃法が含まれます。「突拳」と名がついていますが、打つことだけでなく、相手の攻撃を受け流す「受け身」の技術も非常に重視されます。

これらの技術は、単に相手を倒すためのものではなく、「相手を傷つけず、かつ自らを守る」という理念に基づいて構成されています。例えば、組討術でも、関節を極める際には相手を痛がらせる程度の力加減で止める「制する技」が中心であり、決して破壊を目的としません。

現代における少林寺拳法の魅力と普及状況

では、現代において少林寺拳法はどのような位置づけなのでしょうか。残念ながら、柔道や空手に比べると、その認知度は決して高いとは言えません。しかし、その独自性と効果は、 nichな層から高い支持を集めています。

スポーツとしての側面

近年では、その鍛錬法の効果から、スポーツ分野での応用も進んでいます。特に、バランス感覚や柔軟性を高める効果が評価され、他の格闘技の上達を目指すトレーニングとして取り入れるケースも見られます。

メンタルトレーニングとしての価値

「正拳正心」の理念から、精神面への効果も見逃せません。繰り返される基本動作の稽古は、一種の瞑想のような効果を持ち、集中力や忍耐力を養うのに役立つとされています。現代社会で求められるメンタルの強さを育む手段として、改めて注目されています。

現在の普及状況と活動

全国には数多くの道場が存在し、熱心に練習に励む人々がいます。少林寺拳法連盟（宗道臣氏の後継者である宗道貴氏が会長）を中心に、定期的な講習会や段位審査が行われ、後進の育成に力を入れています。また、国際交流も盛んに行われ、海外からの留学生も少なくありません。

少林寺拳法の今後：期待される役割と課題

少林寺拳法が今後さらに注目を集めるには、どのような可能性と課題があるのでしょうか。

期待される役割

• 生涯スポーツとしての価値: 関節への負担が比較的少ないことから、幅広い年齢層が生涯にわたって楽しめるスポーツとしての可能性があります。
• 自己防護・防犯教育: 実践的な護身術としての効果は非常に高く、特に女性や高齢者向けの防犯教室などでの活用が期待できます。
• 心の教育: 「礼儀」や「我慢」を重んじる武道の精神は、現代の教育現場や企業研修など、心の教育として再評価される可能性があります。

課題と展望

一方で、課題も指摘されています。最大の課題は「認知度の低さ」です。柔道や空手に比べ、メディアへの露出が少なく、その魅力が十分に伝わっていないのが現状です。また、古来の理念を現代にどうアピールするか、新しい形の普及