年賀状

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年賀状の「変化」が加速中:4割の人が手紙を出さない時代へ

毎年恒例の年末年始、日本人なら誰もが一度は手を取ったことがある「年賀状」。しかし、その伝統が今、大きな転換点を迎えています。最新の調査によると、年賀状を出す人の割合が過去最低を記録。一方で、SNSやメッセージアプリといった「デジタル年賀状」の存在感が高まる一方で、企業を含めた「年賀状じまい」の動きも顕著に。この変化は単なる習慣の変化にとどまらず、日本社会のつながり方そのものを問い直すサインでもあります。


メインストーリー:年賀状の「存在感低下」とその背景

オリコンが毎日新聞に提供したパイロット調査によると、2025年の年賀状を出す人の割合は4割をわずかに下回ることが明らかになりました。平均枚数は33枚で、前年比で減少傾向が続いています。特に注目されたのは、60代男性の中には150枚もの年賀状を出す人もいるという極端な偏り——つまり、「出す人は本気で出す」「出ない人はゼロ」という二極化が進んでいるのです。

さらに、テレ朝NEWSの取材では、「年賀状に『ありがとう』『お世話になりました』といった一言を添える人が増えている」と報じられました。形式的な挨拶から、感謝の気持ちを込めたメッセージへと、年賀状の役割そのものが変わりつつあるのです。

この二つの動き——「量の減少」と「質の進化」——は、単なる流行ではなく、現代社会のコミュニケーション構造の変容を映し出しています。

手書きの年賀状を家族で確認する様子


最新情報:企業の「年賀状撤退」が本格化

2026年を前に、企業の間でも「年賀状じまい」の動きが加速しています。青森放送が報じたところによると、青森県内の企業の7割が「2026年は年賀状を出さない」と回答しています。その理由として、「コスト削減」「環境負荷」「効果の薄れ」が挙げられています。

特に中小企業では、印刷・郵送費用だけでも年間数十万円単位の負担になることも。加えて、受け取った側も「返信義務」を感じてストレスを抱えるケースが多く、双方向の負担として認識され始めています。

また、大手企業では「デジタル年賀状」や「社内SNSでの挨拶」への切り替えが進んでおり、物理的な紙媒体からの離脱が顕著です。これは、若手社員の「年賀状疲れ」や「返信の面倒さ」への共感が背景にあるとも言われています。


文脈と背景:なぜ年賀状はここまで変わったのか?

年賀状の歴史は古く、江戸時代には「年始回り」の形で親戚や近所との縁を繋ぐ習慣として定着しました。明治以降、郵便制度の整備とともに「年賀はがき」として普及。戦後は「新生活の挨拶」として国民的行事となり、1980年代にはピーク時で年間100億枚以上が送られたとも言われています。

しかし、2000年代以降、携帯電話やインターネットの普及とともに、その役割は徐々に縮小。特に2010年代からは、LINEやX(旧Twitter)、Instagramなどで「あけおめ」メッセージを送る習慣が広がり、年賀状の「必須性」が揺らぎ始めました。

さらに、コロナ禍を経て「非接触志向」が強まり、人との物理的接触を避ける動きが加速。年賀状の「返信義務」や「住所の公開」への抵抗感も高まり、多くの人が「もういいかな」と思うようになったのです。


即時影響:社会・文化・経済への波及効果

年賀状の減少は、単なる「習慣の変化」ではなく、さまざまな分野に影響を与えています。

1. 郵便業界の打撃

日本郵便の年賀はがき販売冊数は、2000年代初頭の約30億枚から、2024年には約18億枚に減少。これは郵便事業全体の収益にも影響を及ぼしており、地方局舎の縮小や配達頻度の見直しといった対応が迫られています。

2. 印刷・紙業界の縮小

年賀状需要の減少は、印刷会社や製紙メーカーにも大打撃。特に中小印刷店では「年賀状シーズンがないと成り立たない」という声も。一部では「個性年賀状」「オーダーメイド年賀状」などのニッチ市場への転換を図っていますが、継続は困難な状況です。

3. 人間関係の「再定義」

「年賀状を出さない=関係を切る」という従来の価値観が崩れつつあります。代わりに、「本当に大切な人だけに丁寧なメッセージを送る」というスタイルが注目されています。テレ朝NEWSが報じた「ありがとうの一言」こそ、この新しい価値観の象徴です。


今後の見通し:年賀状は「消える」のか、「進化する」のか?

今後の年賀状の行方については、専門家の間でも意見が分かれています。

一方では、「2030年までに年賀状の9割がデジタル化される」と予測する声も。特にZ世代を中心に、「紙の年賀状は古い」「環境にも悪い」という意識が強く、将来的には「年賀メッセージ=SNS投稿」が主流になる可能性があります。

他方で、「手書きの温かみは失われない」と主張する文化研究者もいます。「年賀状は、相手への敬意と時間をかけた思いやりの証。デジタル化すればその意味が薄れる」と警鐘を鳴らすのです。

実際、2025年の調査では、「60代以上の層では依然として年賀状を重視する傾向が強い」との結果も。つまり、世代間のギャップが年賀状の未来を分かつ鍵となるでしょう。

スマートフォンでデジタル年賀状を送る様子


まとめ:年賀状は「終わり」ではなく「変容」の途中

年賀状が減っているのは事実ですが、それは「終焉」ではなく「進化」の一過程です。