年賀状

年賀状「じまい」の急増が示す現代社会と新年のあり方～コスト削減から心の機微まで～

「今年も年賀状を出さねば」と年末の忙しい合間を縫って、はがきを書き溜めていた記憶がある方も多いだろう。しかし、近年、この日本の新年の風景に変化が起きている。企業や個人の間で「年賀状じまい」が急速に広がりを見せ、社会現象として大きな注目を集めているのだ。

2026年的新年を控えた今、年賀状のあり方を問い直す声が各方面から上がっている。帝国データバンクや東京商工リサーチの調査では、企業の半数以上が年賀状の差し止めを検討しているという衝撃的な結果が出ている。なぜ今、年賀状見送りの動きが加速しているのか。その背景には、DX化の波や人間関係の変化、そして現代社会の効率至上主義が影響しているようだ。

本記事では、最新の信頼できるデータを基に、年賀状じまいの実態とその背景、そして今後どう振る舞うべきかについて、深掘りしていきたい。

ニュースが伝える「年賀状じまい」の現実

企業の半数以上が見送りを選択

まず、目を疑うようなデータからお伝えしよう。Yahoo!ニュースが報じた帝国データバンクの調査（2025年12月16日付）によれば、企業の「年賀状じまい」が半数を超えたという。「コスト削減」や「事務手続きの手間削減」が後押ししている理由として挙げられている。

「年賀状の発送は、印刷、宛名書き、発送手続きなど、企業にとって不小的な業務負担となります。特に人手不足が深刻化する中、この負担を軽減したいという要望は強い」（帝国データバンクの調査に関する記事より）

この傾向は、大企業に留まらず、中小企業にも広がっているのが特徴だ。経済紙の日経新聞（2025年12月16日付）も、東京商工リサーチによる「企業における2026年の年賀状」調査結果を紹介し、企業の間で「デジタル化」へのシフトが加速していると伝えている。

個人の間でも拡大する「じまい」の波

一方で、個人の間でも年賀状見送りの気持ちは強まっている。毎日新聞（2025年12月16日付）の記事は、「急速に広がる『年賀状じまい』届いたら返事は？縁切れない工夫は？」と題し、年賀状のやり取りにおける現代の悩みを深く掘り下げている。

この記事が指摘するように、単に「出さない」だけでなく、「相手から届いた場合、どう返すか」という新たなマナーの悩みも生まれている。「一度年賀状を送らないと決めた相手から、年賀状が届いたら、どう返信すれば良いのか？」というジレンマは、現代特有の社交的な苦悩と言えるだろう。

なぜ今、「年賀状じまい」なのか？ その背景にある3つの要因

なぜ、これほどまでに年賀状を見送る動きが加速しているのだろうか。単なる「手間」という理由だけでは説明がつかない、より深い背景を探ってみよう。

1. DX（デジタルトランスフォーメーション）の浸透と「効率」の追求

まず挙げられるのは、企業内でのDX化の進展だ。近年、社内業務の効率化が叫ばれ、稟議書や報告書の電子化が進んだ。その延長線上で、はがき一枚一枚に手間暇かけることへの違和感が生まれている。

特に、経理や総務部門に限界まで業務が集中する年末年始に、大量のはがきを処理することは、人的リソースの無駄遣いに見える側面もある。デジタルコミュニケーションが主流となった現代において、物理的なはがきのやり取りは「非効率」と見なされがちだ。

2. 「ご無沙汰」の pessoal risk を避ける「忖度」の文化

2つ目の要因は、人間関係の機微にある。昨今のトレンドとして、「相手に気を遣う」、あるいは「失礼に当たるかもしれない」という配慮から、あえて手を出さないという側面がある。

特定の相手だけに年賀状を出す・出さないという行為は、相手との関係性を露呈してしまうリスクを伴う。例えば、去年は送ったが今年は送らない、あるいはその逆の場合、「何かあったのでは？」と誤解を招く可能性も否定できない。

毎日新聞の記事でも指摘されているように、相手から年賀状が届いた場合の返信のマナーが問題になる背景には、この「縁切りを避けるための心配り」がある。現代人は、SNSやメールなど、常に「見える化」される関係性に置かれているため、年賀状という形で「格付け」をしたくないという無意識の_DISTANCING_が働いているのかもしれない。

3. コストと価値観の変化

3つ目は、純粋な経済的コストと価値観の変化である。はがき一枚数十円、切手代、さらには宛名書きのための名簿管理や印刷代など、年賀状には意外と大きなコストがかかる。

帝国データバンクの指摘通り、特に企業においてはこのコスト感が痛い。また、個人の間でも「年賀状は義務」という意識が薄れ、「大切な人には、はがきよりも直接会う」「LINEやメールで一言添える」という、よりパーソナルで直接的なコミュニケーションを好む傾向が強まっている。

年賀状じまいが社会に与える影響

このトレンドは、単なる慣習の変化に留まらない。社会・経済にどのような影響を与えているのか考えてみよう。

郵政事業への打撃

最も直接的な影響を受けるのは、日本郵便を筆頭とする郵政事業だ。年賀はがきは、年末年始の郵便事業における一大イベントであり、重要な収益源の一つだった。

年賀状の数が減ることで、郵便局の窓口業務や配送網の維持コストとのバランスが課題となる。デジタル社会における郵便事業の在り方を、年賀状の減少がより鮮明に問いかける形となっている。

マーケティング・リレーションシップの変質

企業にとって、年賀状は単なる挨拶ではなく、取引先とのリレーションシップを維持するための重要なツールだった。しかし、その役割も変化しつつある。

「年賀状じまい」を推進する企業は、代わりにウェブサイトでのお知らせや、SNSを活用した挨拶、あるいは年始のオンラインミーティングでの直接的な交流を重視するようになっている。「量の挨拶」から「質のコミュニケーション」へ、企業のPR戦略が転換しているのである。

今後どうすればいい？ ベストプラクティスと今後のマナー

では、年賀状を送りたいけれど、「じまい」の波に流されそうな場合、どのような選択肢があるのだろうか。毎日新聞や専門家が提唱する、「縁を切らないための工夫」をいくつか紹介しよう。

ハイブリッドなアプローチ

1. PCレター・メール年賀状の活用 企業や個人が、PDFファイルやHTMLメールを使ったデジタル年賀状を送る例が増え