統合幕僚長

中国、元統合幕僚長へ制裁発動：台湾政策の岐路と日中関係の行方

2025年12月、中国外務省が日本の防衛・安全保障の要職にあった人物、岩崎茂元統合幕僚長（当時：第27代）に対して制裁を発令したことは、日中関係に新たな波紋を広げました。台湾の政務顧問に就任したことが、「1つの中国」原則に反するという理由です。

これは単なる一人の元自衛隊高官の人事問題に留まらず、日本の安全保障の在り方、そして東アジアの地政学的リスクに直結する重大な出来事として、国内外の注目を集めています。本記事では、複数の信頼できるニュースソースを基に、事実関係を整理しつつ、その背景と今後の行方を深掘りします。

事態の核心：岩崎氏への制裁とその理由

中国外務省の公式発表

2025年12月15日、中国外務省の報道官は会見で、岩崎茂元統合幕僚長ら複数の日本人に対して制裁を科すと正式に発表しました。制裁内容は、 1. ビザ（査証）の発給制限 2. 中国国内における資産の凍結 3. 中国企業との取引禁止

これらは、中国側が「レッドリスト」として指定する個人への典型的な措置です。

報道機関の伝え方

この発表を受け、日本の各大手メディアは速報で伝えました。

• ロイター（Reuters） は、「中国、岩崎茂元統合幕僚長に制裁 ビザ制限・資産凍結・取引禁止」という見出しで、制裁の事実を冷徹に報じました。
• 日テレNEWS NNN は、「中国、自衛隊元幹部への制裁発表『1つの中国原則に反した』」とし、中国側の主張する根拠を明確にしました。
• Yahoo!ニュース（毎日新聞） は、「中国、自衛隊元統幕長の台湾政務顧問に異例制裁」との見出しを掲げ、「独立勢力と結託」という中国側の強い非難のニュアンスを伝えています。

事実は明白です。岩崎元統幕長が台湾の政務顧問に就任した行動に対して、中国が強硬な対応に出たのです。

岩崎茂氏とは：防衛官僚から台湾の顧問へ

なぜ、中国がこれほどまでに特定の人物を強く意識するのでしょうか。その背景には、岩崎氏の経歴と影響力があります。

防衛・統合幕僚監部の重要性

岩崎茂氏は、海上自衛隊出身の将官で、第27代統合幕僚長（2023年11月〜2025年3月）を務めました。統合幕僚長は、自衛隊の運用の最高責任者であり、日本の国防の最前線に立つ極めて重要な職位です。その立場から、日本の防衛政策や日米同盟の運用、台湾有事といったシナリオについて深い知見と影響力を持っています。

台湾・蕭美琴氏との関わり

この度の制裁の引き金となったのは、岩崎氏が2025年12月上旬、台湾を訪問し、副総統兼政務顧問の蕭美琴氏（Hsiao Bi-khim）と会談を持ち、政務顧問としての役割を引き受けたことです。

蕭氏は、かつて駐米代表として知られる人物で、台湾の対外工作の要です。日本側から見れば、「非公式」の知的交流、あるいは安全保障に関する助言活動と捉えられがちなこの会談でしたが、中国側からすれば、「台湾独立」を標榜する勢力への「結託」行動と映り、制裁という形での報復措置に発展しました。

中国側の論理と「制裁」の背景

「1つの中国」という鉄則

中国がこれほどまでに反発する根幹には、「台湾は中国の不可分の一部である」という「1つの中国原則」があります。中国政府にとって、いかなる国家の政府機関、あるいは元高官が台湾の政府要人（特に蕭美琴氏のような国際的に知られた人物）と公式に会談し、顧問契約を結ぶ行為も、この原則を著しく侵犯する行為と見なされます。

「エスカレーション」のシグナル

過去、中国が日本の個人・法人に制裁を行使した例としては、2020年代に入り、尖閣諸島関連の活動や台湾への武器供与に関与したと判断された企業などが対象となった事例はあります。しかし、元統合幕僚長という、日本の防衛のトップ経験者個人に直接制裁を科すのは、非常に異例かつ強硬な措置です。

これは、日本の安全保障関係者に対し、「台湾との距離を置け」という警告を突き付けると共に、日本社会全体に「台湾有事」に伴う経済的リスク（特に中国市場との関係）を想起させるという、二つの意図を持つパフォーマンスである可能性が高いです。

現在の影響：経済・外交の両面で波紋

中国市場への影響は限定的か

制裁内容である「資産凍結」「取引禁止」ですが、岩崎氏が公職を退いた後、どのような民間活動を行っているか詳細は公表されていません。一般的に、元自衛隊高官が中国企業と直接取引しているケースは稀であり、個人的な資産が中国に存在する可能性も低いため、岩崎氏個人への経済的打撃は限定的と推測されます。

しかし、日本企業や関係者への「空気」への影響は無視できません。「政権与党の議員や、安全保障に携わった人物が中国に制裁を科された」という事実は、日本企業が中国とのビジネスを行う際の政治的リスクを織り込む要因となります。

日本政府の対応

日本政府は、中国の制裁発令を「遺憾である」としています。岩崎氏の訪台が「非公式」であり、政府の政策を反映したものではないと説明し、中国側が過剰に反応していると批判する構えです。

しかし、一方で、「元高官の台湾訪問を事実上容認する」という日本の対中姿勢の強化につながるかが注目点です。岸田文雄政権、そして次期政権において、安全保障と経済のバランスをどう取るかが問われています。

歴史的文脈：台湾政策の変遷

日本の「戦略的曖昧」の行方

日本政府は従来、台湾問題に対して「戦略的曖昧さ」を維持し、「台湾海峡の平和と安定」的重要性を説くに留めてきました。しかし、中国の台頭と台湾への圧力が強まる中で、日本の有識者や元軍人らの訪台が活発化しています。

岩崎氏の例は、その最たるものです。これは、日本の安全保障関係者が「台湾有事は日本有事」という認識を深め、非公式の知的交流を通じて台湾側との連携を深めようとする動きの表れと見ることもできます。

中国の「威嚇」としての制裁

中国の制裁発令は、過去に「カナダの元高官訪台」「リトアニアの閣僚訪台」などに対して同様の措置を講じており、一定のパターン化が見られます。つまり、台湾との「公式・