認知症

山本學さん、88歳で「初期認知障害」の診断と向き合う。弟・圭さんの死と重なる哀しみ

俳優の山本學さん（88歳）が、「初期認知障害」と診断されたことを公にしました。このニュースは、多くのファンや医療関係者、そして高齢期の人生を歩む人々に、大きな衝撃と深い思いを寄せさせています。特に、その診断の背景には、長年連れ添った弟・山本圭さんの死が重なっていたのです。

この出来事は、単なる有名人の病気の告白ではありません。認知症、そして前認知症状態である「軽度認知障害（MCI）」という言葉を社会に浸透させ、老化に伴う脳の変化と、それと向き合う家族の姿を浮き彫りにしています。ここでは、最新のニュースを基に、山本學さんとその家族が置かれた状況、そしてこの出来事が社会に与えるインパクトを詳しく掘り下げていきます。

ニュースの核心：88歳の俳優、そして兄弟の絆

2024年5月、山本學さんはテレビ番組『徹子の部屋』に出演し、自身の健康状態について語りました。その中心となったのは、以下の事実です。

• 診断の事実： 88歳の山本學さんが医師より「初期認知障害（軽度認知障害・MCI）」と診断された。
• 同時期の悲しみ： 診断前後には、自身の人生を支え、芸術家としての情熱を共有した弟・山本圭さん（享年65）を亡くしている。
• 家族のサポート： 妻の山本一路子さん（元女優）をはじめとする家族の支えを力強く受けている。

これらの事実は、Yahoo!ニュースやdメニューニュース、TVerなどの複数の信頼できるメディアによって報じられています。山本學さんの言葉には、病気への不安よりも、亡き弟への想いや、これからを生き抜こうとする強い意志が込められていました。

「初期認知障害（MCI）」とは？山本學さんの診断を理解する

山本學さんの診断名、「初期認知障害」という言葉は、認知症の一歩手前の状態として知られる「軽度認知障害（Mild Cognitive Impairment: MCI）」を指す可能性が高いです。

認知症との違い

認知症は、脳の疾患により記憶や思考、行動などの能力が日常生活に支障を来す状態を指します。一方、MCIは、年齢相応の認知機能と比べて少し低下が見られるものの、まだ日常生活に大きな問題が生じていない状態です。

• 認知症： 日常生活に支障がある。
• MCI（軽度認知障害）： 認知機能の低下は見られるが、日常生活はほぼ自立。

山本學さんが「一歩手前」という表現を使い、自身の状況を正直に伝えている背景には、この医学的な理解があると推測されます。これは、決して「もうダメだ」という状況ではなく、「今後、適切な対策と生活習慣を整えることで、進行を遅らせ、あるいは元の状態に戻ることも期待できる」という、医療者がいう「介入の機会」でもあるのです。

弟・山本圭さんとの哀しい別れと、芸術家としての魂

このニュースをより深く理解するためには、亡くなった弟・山本圭さんとの関係性を無視できません。Yahoo!ニュースの記事にあるように、山本圭さんは絵描きを志望する芸術家でした。

兄弟の絆と芸術的共鳴

山本學さんも彫刻を学ぶなど、芸術的な感性にあふれた人物です。同じ芸術の道を歩もうとした兄弟。山本圭さんは、兄の存在に大きな影響を受けながらも、独自の絵画の道を歩みました。しかし、その人生は孤独であり、経済的にも苦しいものだったようです。

『徹子の部屋』で山本學さんが語った言葉には、亡き弟への深い哀しみと、自身の置かれた状況への複雑な思いが交差していました。

「かわいそうに孤独で死んでった」

「妻は潔い人だった」

この一言には、家族の死と自身の老化という二重の喪失感が込められているように思います。認知機能の低下と、家族の死というストレスが、山本學さんの心身にどのような影響を与えたのか、想像に難くありません。

認知症・MCIという現実：日本社会が直面する課題

山本學さんの告白は、日本の高齢化社会における重要な課題を私たちに突きつけています。それは、認知症やMCIとどう向き合うかという問題です。

統計が示す現実

日本では65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症を患い、MCIを含めるとその割合はさらに高くなると推計されています。超高齢社会である日本にとって、認知症は他人事ではありません。山本學さんの例は、その最も身近な例証の一つです。

勝手な憶測と正しい知識

山本學さんの診断を受けて、SNSやワイドショーでは様々な憶測が飛び交いました。しかし、医学的な事実として、MCIと診断されたからといって、必ずしもすぐに認知症が進行するわけではありません。生活習慣の改善（適度な運動、バランスの取れた食事、脳のトレーニング、社会参加など）により、正常な状態に戻るケースも珍しくありません。

山本學さん本人が「これからどう生きるか」を考えているように、医療やサポート体制を整えることで、そのQOL（生活の質）を維持することが可能なのです。

今後の展望：山本學さんと家族、そして社会の選択

山本學さんの今後、そしてこの出来事が社会に与える影響を展望します。

1. 医療と介護の選択肢

山本學さんは現在、専門医の指導の下、治療や生活指導を受けていると考えられます。今後、症状が進行するのか、それとも安定するのか。それは本人の生活習慣や環境、そして運にも左右されます。重要なのは、焦らず、過度に恐れず、医療者と相談しながら進めていく姿勢です。

2. 家族の役割

妻や家族のサポートが鍵を握ります。認知症やMCIの家族を支えるには、深い理解と忍耐、そして適切な介護知識が必要です。山本學さんの妻が「潔い」と評した人柄が、今後の家族の支えとして大きく作用する可能性があります。

3. 社会的な影響

山本學さんの告白は、認知症という病気に対する偏見を和らげる一助となるかもしれません。「認知症＝恐ろしい病気」というイメージを、「老化の一部として捉え、どう付き合っていくか」という視点へとシフトさせるきっかけになり得るのです。

また、高齢の芸能人が自身の健康状態を公にすること自体が、社会全体の高齢者への理解を深め、医療や福祉制度への関心を高める効果も期待できます。

まとめ：老化と向き合う、その尊さと哀しみ

俳優・山本學さん（88歳）の「初期認知障害」という診断は、彼個人の悲劇でありながら、同時に多くの人々に希望と教訓を与える出来事でもあります。

弟・山本圭さんの死と重なるこの時期、山本學さんは「人生の最終章」をどう生きる