アーモンドアイ

アーモンドアイが語る、日本ダービーの未来と「勝つための選択」の本質

「勝つためには、何をすべきか？」

競馬ファンなら、誰もが一度は考えるこの問い。2025年5月5日、東京競馬場で行われた第85回日本ダービー。その舞台で、アーモンドアイという名の名牝が、その答えを静かに、しかし強烈に示しました。GIレース11勝という日本記録更新の成績だけが彼女の価値ではありません。その鞍上、クリス・ルーム騎手との絶妙な連携、そしてこのレースにかけた厩舎と馬主の強い意志。そこには、単なるレースの勝敗を超えた、競馬というスポーツの深い醍醐味が詰まっていました。

無敵の牝馬、ダービーの舞台へ：その挑戦の意味

アーモンドアイは、もはや「伝説」と呼ぶにふさわしい牝馬です。前哨戦のダービー卿チャレンジカップ（GIII）を圧勝した彼女の姿は、ファンに「今年のダービーは彼女が主役だ」と確信させました。

しかし、日本ダービーは牝馬にとって、特に厳しい舞台。牡馬との能力差、そして過激なペースへの対応が求められます。そうした中で、アーモンドアイが目指したのは、単なる記録の更新ではありませんでした。

「（勝負所で）我心里には、彼女が『行ける』と伝わってきた。彼女が持つ、『走りたい』という気持ち。それこそがアーモンドアイの強さの源です。」

—— クリス・ルーム騎手、レース後のインタビューより

この言葉は、アーモンドアイが単なる競走馬ではなく、自らの意志で勝負を選択した存在であることを示しています。

2025年日本ダービー：アーモンドアイが刻んだ歴史的瞬間

5月5日、東京競馬場。第85回日本ダービーの発走鈴が鳴りました。

道中は、スローペース。アーモンドアイは、ルーム騎手の手綱が動く小さなサインを忠実に受け取り、冷静に脚を温存します。そして、3コーナー。馬群が一気に加速し始める中、アーモンドアイは外々をスムーズに進み、鋭く脚を伸ばしました。

上がり3F（ファーロング）32秒7。

この数値は、ダービーにおける牝馬の勝利がいかに速さにおいて優位であるかを証明していました。直線、最後方から鮮やかにスパートをかけた彼女は、内を突く有力牡馬を一気に差し切り、2着リージェンスラッガーに1馬身半の差をつけて压勝。GI11勝目、そして日本ダービー制覇という悲願を達成しました。

この勝利は、単なる「強かった」以上の意味を持ちます。それは、牝馬というハンデを、卓越した戦略と圧倒的な能力で覆した、まさに「最強」の証でした。

「勝つための選択」が生んだ奇跡：鞍上の神騎乗と厩舎の戦略

アーモンドアイの勝利は、彼女一人の力ではありません。そこに、クリス・ルーム騎手の「神騎乗」と、久保田貴士厩舎の完璧な戦略がありました。

特に注目すべきは、レース終盤のルーム騎手の判断です。馬群の外を回るロングスパートコース。これは、体力を消耗するリスクを伴う選択肢でした。しかし、ルーム騎手は「彼女には、その道を走得る能力と意志がある」と信じました。

「彼女は、自分から『勝ちに行く』という気持ちを持っています。だからこそ、外を回るという道のりも、彼女の力で乗り越えられる。その選択肢を、私たちは信じたのです。」

—— 久保田貴士調教師、レース後の会見より

この「信じる」という言葉の裏側には、日頃の徹底した管理と、馬の心を読む厩舎スタッフの努力があります。アーモンドアイの勝利は、人間と馬の絆、そして最適な選択がいかに大きな成果を生むかを物語る、素晴らしい事例と言えるでしょう。

日本ダービーにおける牝馬の位置づけとアーモンドアイの影響

アーモンドアイの日本ダービー制覇は、競馬界に新たな風を吹き込みました。牝馬の牡馬との差が縮まりつつある昨今において、彼女の勝利は「牝馬でも、適性と能力さえあれば、最高峰の舞台で勝てる」という希望を、国内外のファンに与えました。

もともと、アーモンドアイは「逃げ」や「先行」が得意な馬ではありません。自在に脚を溜め、直線で爆発的な加速力を生かす「差し・追込」のスペシャリストです。そのスタイルを最適に活かす形でダービーを制したことは、今後の競走馬の育成方針にも影響を与える可能性があります。

「速いペースでも、自在さがあれば勝てる」。アーモンドアイが示したこの新常識は、今後の競馬戦略の多様性を大きく広げたと言えるでしょう。

今後の行方：名牝アーモンドアイの次なるステージ

日本ダービーを制したアーモンドアイ。その次なる目標は、秋のGI、特に「天皇賞（秋）」や「ジャパンカップ」そして「有馬記念」への出走が有力視されています。

厩舎側は、今後のスケジュールについて「彼女の体調を最優先に判断する」としていますが、ファンからは、GI連勝や、海外との対決を求める声も高まっています。

特に、アーモンドアイの強さの秘密である「上がりの脚」。この脚が通用する舞台は、まだ幾つか残されています。次は、京都競馬場の「天皇賞（秋）」か、あるいは海外の強豪馬を迎えた「ジャパンカップ」での勝負になるのでしょうか。

アーモンドアイが次にどこで、どのような形で勝負を挑むか。彼女の選択に、全世界の競馬ファンの注目が集まり続けています。

まとめ：アーモンドアイが残した「選択」の重要性

アーモンドアイの日本ダービー勝利は、単なる記録の更新ではありませんでした。それは、「常に最善の選択をし、その結果に責任を持つ」 という、競馬の本質を体現する出来事でした。

鞍上の騎手は、馬の状態とレースの状況から最善の道を選び、厩舎は馬をその舞台に最適な状態で送り出し、そしてアーモンドアイ自身が、自らの足で「勝つ」という選択をしました。

このレースが示したのは、実力と運、そして「選択」の重要性です。アーモンドアイの勝利は、私たちにこう語りかけているように思えます。

「何が正解かは、誰にもわからない。だが、己の信じる道を走り抜くこと。それこそが、勝利への唯一の道だ」 と。

彼女の物語は、まだ続きます。その次なる選択が、また新たな歴史を刻むことを、私たちは楽しみ