坂本龍一
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坂本龍一、遺作「Merry Christmas Mr. Lawrence」の再上映が決定。最期の日々を綴ったドキュメンタリー映画も公開へ
世界中の人々に愛され、音楽の歴史にその名を刻んだ巨匠、坂本龍一。その最後の輝きと、残された音と映像が今、新たな形で蘇ろうとしています。2023年3月に永眠してから1年以上が経ちますが、その遺志を受け継ぐかのように、未公開の映像と音楽に迫る貴重なプロジェクトが相次いで発表されています。
特に注目されているのは、彼の最期の日々を追ったNHKのドキュメンタリー映画と、デビュー45周年を記念した代表作の再上映です。これは単なる追悼事業ではなく、坂本龍一というアーティストが最後に残した「メッセージ」そのもの。彼ががんと向き合いながらも、音楽と映画への情熱を最後まで燃やし尽くした姿を、私たちは改めて見つめ直す機会を得ています。
坂本龍一の遺志を受け継ぐ、2つの重大な動き
昨今、坂本龍一に関する大きな動きが2つ報告されています。1つは、彼の最期の日々を綴ったNHK制作のドキュメンタリー映画『坂本龍一 最後の一年』の公開、そしてもう1つは、彼の俳優デビュー作であり、今もなお根強い人気を誇る映画『戦場のメリークリスマス』の4Kデジタル修复版の再上映です。
NHKドキュメンタリー『坂本龍一 最後の一年』の公開
まず、最も衝撃的なニュースは、NHKが制作したドキュメンタリー映画『坂本龍一 最後の一年』の存在です。産経ニュースの報じるところによれば、この映画は、坂本龍一さんががんと告げられてから亡くなるまでの1年間を密着取材した内容。彼の自宅スタジオでの制作風景や、がん治療に専念する姿、そして最後のコンサート「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022年12月11日」の舞台裏などが収められています。
このドキュメンタリーは、単なる記録映画ではありません。坂本龍一という人物の、苦悩と闘争、そして音楽への純粋な情熱を赤裸々に描いたものです。彼が自らの口から語る「がんを通して人生と向き合うこと」についての言葉は、音楽ファンに留まらず、現代を生きるすべての人々に深い思索を迫るでしょう。映画.comのレビューでも言及されている通り、その姿は見る者に多大な影響を与えるに違いありません。
『戦場のメリークリスマス』4K修復版で再び蘇る名作
もう1つの大きな出来事は、1983年に公開された映画『戦場のメリークリスマス』の4Kデジタル修复版が全国で公開されることです。この作品は、英国人俳優のデビッド・ボウイ、ビートたけしらが共演し、坂本龍一が音楽を担当したばかりでなく、彼自身が“キタザワ・サカモト”役で俳優デビューを果たした記念碑的な作品です。
この再上映は、デビュー45周年を記念したイベント。当時を知る世代には懐かしい、そして若者には新たな発見がある名作が、最新のデジタル技術によって鮮やかに蘇ります。特に、坂本龍一の音楽、そして彼自身の演技を改めて堪能できるのは大きな魅力です。近年では、田中泯さんとの“宇宙的世間話”などが語られるなど、その人間性にも焦点が当てられることが増えていますが、こうした背景もあり、改めて彼の全貌に迫る機会として、多くのファンが期待を寄せています。
がんと向き合いながらも変わらなかった音楽への情熱
坂本龍一の最期の一年を語る上で、避けて通れないのが「がん」という病との闘いでした。彼は2014年に咽頭がんと診断された後、2020年に再発・転移が確認され、以降は治療に専念しつつも、音楽活動を続けていました。
「音楽家としての責務」を果たし続ける
がんが発覚して以降、坂本龍一の活動は一層加速しました。特に印象的なのは、2022年12月に東京のNHKホールで行われたピアノコンサート『Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano』です。これが、彼の生涯最後のコンサートとなりました。その模様は、前述のNHKドキュメンタリーでも詳細に描かれています。
彼は自らのブログ(note)で、体調の変化や制作活動について率直に綴っていました。体調が優れない日もあれば、スタジオで音を操る喜びを記す日も。その姿勢は、まさに「音楽家としての責務」を全うしようとする姿勢そのものでした。彼の音楽は、がんという現実と向き合う中で、より深く、そして普遍的なものへと昇華されていったと言えるでしょう。
映画音楽の金字塔との再会
『戦場のメリークリスマス』の再上映は、そうした坂本龍一の軌跡を振り返る上で非常に意義深いものです。当時、まだ若手の作曲家だった彼が、国際的な監督・脚本家たちと渡り合い、世界に通用する音楽を生み出した。その原点に改めて光を当てる試みは、彼の音楽的キャリアの広がりと深さを象徴しています。映画音楽でアカデミー賞を受賞した『ラスト・エンペラー』や、グラミー賞を受賞した『荒野のmerica』など、彼の足跡は枚挙に暇がありませんが、俳優としての一面も併せて見ることで、彼というアーティストの多面性を再認識できるのです。
日本と世界に残した音楽的遺産
坂本龍一の死は、音楽業界だけでなく、社会全体に大きな影響を与えました。彼は、環境問題や社会問題にも積極的に発信しており、そのメッセージは音楽と密接に結びついていました。
ヤン・キブールとビートたけし、そして田中泯
『戦場のメリークリスマス』の再上映は、坂本龍一が共演した面々への鎮魂歌とも言えます。主役を務めたデビッド・ボウイは既に亡く、ビートたけしも高齢です。また、田中泯さんとは近年、対談やイベントで語られる「宇宙的世間話」など、芸術を超越した交流が見られました。そうした人間関係の輪が、彼の音楽の深みを形成していたことは間違いないでしょう。
特に、田中泯さんは、Yahoo!ニュースで公開された記事でも回想されている通り、坂本龍一との対話そのものを芸術として捉えていました。二人の語り合う世界観は、まさに宇宙的とも言える広がりを持っており、それが彼の音楽の源流の一つだった可能性も示唆されています。
環境と音楽、その先にあるもの
坂本龍一は晩年、環境問題への関心を深め、特に「ノーマーク(No Nuke)」などの活動に精力的に取り組んでいました。福島第一原子力発電所の事故以降、その活動は一層強まり、音楽を通じて平和と環境の重要性