給付付き税額控除

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「給付付き税額控除」とは?所得税減税と現金給付を一体で…与野党協議の行方

所得再分配の手段として、近年再注目を集める「給付付き税額控除」。その名の通り、税金の負担を軽減する「控除」と、現金などでの「給付」を組み合わせた制度です。岸田文雄首相が所得税減税を掲げる中、与野党4党が具体的な導入に向けた協議を開始したことが、2025年5月の一大ニュースとなりました。

この制度導入の行方は、国民の「手取り」をどう増やすかという点で、今後の社会保障や税制の在り方を大きく左右する可能性があります。本記事では、与野党4党の協議開始という最新の動きを中心に、給付付き税額控除の仕組みや背景、今後の展望までを専門的な視点から分かりやすく解説します。

与野党4党、協議の火蓋を切る…所得税減税と「給付付き税額控除」の隔たり

2025年5月、与党側(自民党・公明党)と野党側(立憲民主党・日本維新の会)の4党の政調会長が一堂に会しました。議題の中心は、岸田政権が所得税減税として掱げる「定額減税」と、野党が主張する「給付付き税額控除」をどう統合するかという点です。

与党「定額減税」と野党「給付付き税額控除」との隔たり

与党が目指すのは、所得税と住民税を合わせて年間3万円の定額減税を実施するというもの。一方、野党が求める給付付き税額控除は、所得が低い人ほど多くの支援が得られる仕組みを重視しています。

朝日新聞の報道(2025年5月23日付)によると、自民党の渡辺政調会長は「(所得税の)定額減税と給付付き税額控除は別物」との認識を示し、両制度の併用可能性に慎重な姿勢を強調しました。

自民党 渡辺政調会長(朝日新聞より) 「定額減税と給付付き税額控除は別物。まずは定額減税を実施し、その上で(給付付き税額控除を)議論する」

対して、野党側は低所得層への支援効果の高さをアピールし、定額減税に替えて給付付き税額控除を優先すべきだと主張しています。

立憲民主党 長妻政調会長(朝日新聞より) 「低所得者ほど効果がある給付付き税額控除を優先すべき」

この報道は、両者に明確な隔たりがあることを示しています。

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4党の政調会長会談とその背景

5月23日夜、国会内で行われた4党の政調会長会談。この会談を受けて、日本維新の会の浅田政調会長は、給付付き税額控除について「所得税減税と組み合わせることで、低所得者層への支援が手厚くなる」と語り、両制度の融合案を提示しました。

この一連の動きは、岸田首相が掱げる「新しい資本主義」の中核である「所得再分配」の在り方を模索する場でもあります。与野党は、低所得層への実質的な支援をどう確保するかという点で共通認識を持つ一方、手段を巡っては対立構図が鮮明になっています。

「給付付き税額控除」とは?仕組みとメリットを解説

ニュースで頻繁に耳にする「給付付き税額控除」。一体どのような仕組みなのでしょうか。その基本的な仕組みと、メリット・デメリットを解説します。

給付付き税額控除の基本的な仕組み

給付付き税額控除とは、文字通り「給付」と「税額控除」を組み合わせた制度です。

  1. 税額控除: 納めるべき税金の額から一定金額を差し引く(税金の負担を減らす)
  2. 現金給付: 税金を納める必要がない人(=税額控除の恩恵を受けられない人)にも、現金などで同額の給付を行う

この仕組みにより、所得税を納めていない低所得者層や専業主婦世帯など、これまで税制優遇の恩恵が少なかった層にも、手取りを増やす支援が届くようになります。

「定額減税」との違い

制度名 支援の仕組み 低所得者への効果 高所得者への効果
定額減税 所得税・住民税を一律で減税 絶対額は同じだが、収入に占める割合は大きい 絶対額は同じだが、収入に占める割合は小さい
給付付き税額控除 所得に応じて控除額を調整、現金給付も実施 所得が低いほど支援が手厚くなる 所得が高いほど支援額は減る(またはゼロ)

この表のように、両制度は性格が異なります。定額減税は「公平性」、給付付き税額控除は「再分配効果」を重視した制度と言えるでしょう。

協議の行方…議論の焦点と「一体化」の可能性

与野党4党の協議は、これからどう進むのでしょうか。現在の議論の焦点と、今後の可能性について考察します。

議論の焦点「一体化」とは

日本維新の会が提案する「一体化」とは、給付付き税額控除を所得税減税と組み合わせる、あるいは、所得税減税を実施した上で、低所得者層への上乗せ支援として給付付き税額控除を導入するといった、両制度を融合させた形での議論を指します。

浅田政調会長が「(所得税減税と)組み合わせることで、低所得者層への支援が手厚くなる」と語った通り、両制度のメリットを活かし、デメリットを補い合う発想です。

しかし、与党側は「定額減税」と「給付付き税額控除」を「別物」と位置づけ、まずは定額減税を実施する方針を崩していません。与党が考える「一体化」とは、定額減税を実施した後、別途給付付き税額控除を検討するという「順番」の問題に留まる可能性があります。

与党の思惑と野党の攻防

与党側が定額減税にこだわる背景には、所得税減税を掲げた岸田首相の「政治的信認」が関わっています。一方、野党側は、与党が掲げる一律減税が低所得層に十分な恩恵をもたらさないとして、給付付き税額控除を通じて与党を攻める材料としています。

両者の隔たりが埋まらない場合、夏参院選の争点となり、有権者に「どちらの所得再分配政策が国民本位か」が問われることになります。

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給付付き税額控除導入の背景と目的

なぜ今、給付付き税額控除が注目されているのでしょうか。その背景には、日本の社会経済状況の変化があります。

生活保護との「峡谷