ニホンウナギ

ニホンウナギの国際取引規制案「否決」の真実｜ワシントン条約締約国会議で見えた日本の立場と今後の見通し

「ニホンウナギ（和名：ウナギ）」は、日本文化と深く結びついた食材として広く親しまれています。しかし近年、その資源の減少が深刻な社会問題となっています。そんな中、2025年11月、ワシントン条約（絶滅の危機に瀕する野生動植物の種の国際取引に関する条約）の締約国会議（COP）で、ウナギの国際取引を規制するという重大な提案が「否決」されました。

この結果は、日本の食文化や水産業にどのような影響を与えるのでしょうか？そして、なぜ規制案は否決に至ったのでしょうか？本記事では、TBS NEWS DIGや読売新聞などの確かな情報源に基づき、ニホンウナギを取り巻く現状と今後の見通しを詳しく解説します。

ニホンウナギ規制案「否決」…ワシントン条約締約国会議の衝撃事実

2025年11月22日、パキスタンで開催されていたワシントン条約締約国会議（COP）は、大きなニュースをもたらしました。ウナギの国際取引を規制する提案が採択票の過半数（締約国3分の2）を得られず、否決されたのです。

予想を裏切った結果

事前には、ウナギの国際取引を規制する案が採択される可能性が高いと見られていました。しかし、最終的な投票の結果、賛成多数には至りませんでした。この結果を受けて、鈴木農林水産大臣（当時）は「ホッとしてます」というコメントを残しています。

鈴木農水大臣（2025年11月22日、現地記者会見より） 「（ウナギの国際取引規制案が）否決されたと承知しています。日本の立場を訴え、説得を続けてまいりました。まずは、ホッとしています。」

この発言から、日本の外交的努力が功を奏した結果、規制案が見送られたことが窺えます。

今後の見通し：12月5日の本会議が鍵

現時点では規制案は否決となりましたが、まだ完全な決着ではありません。議事録の修正や再投票の可能性が指摘されており、特に12月5日に行われる本会議での再検討が予定されています。

ただし、有力紙の読売新聞は「12月5日の本会議でも否決の公算大」と伝えており、規制導入が実現する可能性は低いと分析しています。

なぜ規制案は否決に至ったのか？日本の戦略と背景

ウナギの国際取引規制案が否決された背景には、日本政府の粘り強い交渉と、議決方法の複雑な事情が絡み合っています。

日本の「食卓」を守るための必死の働きかけ

日本にとってウナギは、単なる食材ではありません。夏の土用の丑の日など、季節の風習と深く結びつき、年間約2万トン以上が消費される重要な蛋白源です。もし規制が実施されれば、国内への輸入や流通に大きな影響が生じ、価格高騰や食卓から姿を消す可能性も懸念されていました。

そのため、日本政府は「国内で消费されるウナギは資源保護に向けた取り組みを強化する」という自主的な管理計画を提示し、規制には反対の立場を貫いてきました。

採択に必要な「3分の2」の壁

ワシントン条約の採択には、締約国全体の3分の2以上の賛成が必要となります。賛成多数ではあったものの、このハードルをクリアできなかったことが規制案否決の直接的な理由です。

今後の展望：ニホンウナギの未来はどうなる？

規制案が否決されたからといって、ニホンウナギの課題が解決したわけではありません。資源の減少は依然として深刻です。今後、私たちが考えるべき点はいくつかあります。

1. 国内の資源管理がさらに重要に

国際的な規制が見送られたことで、国内における資源管理の重要性がより一層高まっています。養殖技術の向上、天然ウナギの乱獲防止、そして稚魚の確保など、日本独自の取り組みを加速させる必要があります。

2. 12月の再投票に備えた対応

12月5日の本会議で再び議論が持ち上がる可能性は残されています。日本政府は引き続き、国内の水産業界や消費者の声を反映させるための外交を展開する必要があるでしょう。

3. 消費者としての意識改革

ニホンウナギの価格高騰や品薄が続く中、消費者としてできることは、安定した供給を支える「価格を正しく評価する」ことかもしれません。また、サステナビリティ（持続可能性）の観点から、適切な時期・適切な資源を消費する意識が求められています。

まとめ：ニホンウナギと向き合う未来

ワシントン条約締約国会議におけるウナギ規制案の「否決」は、一時的には日本の食文化を守る結果となりました。しかし、この結果が永遠に続く保障はありません。

今後は、国内における資源回復への取り組みが、ニホンウナギを未来に繋ぐ鍵となります。鈴木農水大臣の「ホッとしてます」という言葉の裏には、これから始まる更なる努力の重みが込められているのかもしれません。

日本の食卓から、あの独特の香りと風味が失われないよう、政府、業界、そして消費者一人ひとりが知恵を絞っていくことが求められています。