うなぎ
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国際取引規制の行方:ウナギの未来を左右するワシントン条約会議の真相
世界中で親しまれている日本の食文化の象徴、うなぎ。その美しくも神秘的な生態系と、資源の持続可能性をめぐる国際的な議論が、今、大きな節目を迎えています。2025年11月、ワシントン条約(絶滅の危険に瀕する野生動植物の種の国際取引に関する条約、CITES)の締約国会議(COP19)が開催され、その焦点は「ウナギの国際取引規制」に集まりました。
一時は取引規制の導入が現実味を帯びたかに見えましたが、最新の報道によれば、この重要な提案は「否決」に終わろうとしています。この結果は、今後のうなぎの資源管理や、私たちが日常的に口にするうなぎ蒲焼きの価格や供給にどのような影響を与えるのでしょうか。事実に基づき、その行方を深掘りします。
速報:規制強化案は「否決」の方向。12月5日の本会議が焦点
現在、カタールで開催されているワシントン条約COP19では、ニホンウナギを含むウナギ全種の国際取引を規制するための付属書への掲載が議論されていました。
しかし、2025年11月27日付の読売新聞オンラインの報道によれば、「ウナギ規制強化は否決、ワシントン条約締約国会議…12月5日の本会議でも否決の公算」と伝えています。これは、規制に慎重な国々の意見が強く、現段階では合意に至らなかったことを示唆しています。
【速報】ニホンウナギ含むウナギ全種類を国際取引の規制対象にする案は「否決」 12月5日本会議で可決の可能性も (出典:Yahoo!ニュース)
ウナギ規制強化は否決、ワシントン条約締約国会議…12月5日の本会議でも否決の公算 (出典:読売新聞オンライン)
この報道が事実であれば、直近の段階では、国際取引そのものを厳しく制限する動きは一旦見送られることになります。ただし、12月5日に最終投票が行われる予定であるため、最終決定までは慎重な見守りが必要です。
なぜ今、ウナギの国際取引が問題視されているのか?
なぜ、世界中の国々が集まり、一介の食材であるウナギの取引を規制しようとするのでしょうか。その背景には、深刻な資源の枯渇問題があります。
① ニホンウナギの深刻な資源減少
まず第一に、私たちが最も身近に口にする「ニホンウナギ」の生産量は年々減少傾向にあります。国内のうなぎ養殖業者は、海で捕獲される天然の「ふ化稚魚(シラスウナギ)」を育てて成魚として出荷するという構造ですが、このシラスウナギの捕獲量が激減しているのです。
原因は、河川の護岸工事による产卵場の減少や、海洋汚染、乱獲など、複合的な要因が指摘されています。資源が減れば、当然、飼育成本が上がり、消費者が支払ううなぎの価格にも影響が出ます。
② 国際的な取引の実態
ウナギは、日本だけでなく、韓国や台湾、欧米諸国でも大変人気があります。そのため、シラスウナギは国際取引され、各国で養殖されています。規制案の目的は、この国際取引を管理し、乱獲を防ぎ、資源の回復を促すことにありました。
しかし、規制を強化すれば、輸出や輸入が制約され、取引業者や養殖業者の経営に直結するため、経済的な側面からの反発も強く、今回の議論が難航している背景があります。
議論の行方を左右する「規制」とは?
この議論で出てくる「規制」の具体的な中身を確認しておきましょう。ワシントン条約での規制は、主に以下の2つの段階に分けられます。
- 付属書II(ニ)への掲載案: これは、「取引量を管理する必要がある」という位置づけです。輸出や輸入に際し、政府が発行する許可証(CITES許可証)の取得が義務づけられます。取引自体は禁止されませんが、量的な管理がスタートします。
- 付属書Iへの掲載案: これは、「商業目的での国際取引を禁止する」という最も厳しい規制です。このレベルに至れば、輸出・輸入そのものが事実上不可能になります。
報道によれば、今回は「全種類」を対象にと議論が進んでおり、特にニホンウナギを含む多くの種をII類に掲載する案が主たる議題でした。しかし、規制に慎重な国は、「各国の自主的な資源管理で対応すべき」「漁業関係者の生活に影響が大きい」という立場を崩していません。
規制見送りがもたらす「今」の影響とは?
仮に、この規制強化案が正式に否決された場合、どのような影響が考えられるでしょうか。
日本国内への影響
- 価格安定の可能性: シラスウナギの輸入規制や、国際取引の制限がなければ、養殖業者は従来通りシラスウナギを調達できます。これは、規制強化によって供給が逼迫し、価格が高騰するリスクを回避することに繋がります。ただし、根本的なシラスウナギ不足は解決していないため、価格が下がるとは限りません。
- 養殖業者の安心: 国際取引に携わる業者にとっては、規制の悬崖が下りたことで、事業計画を立てやすくなるという面があります。
グローバルな視点で見た場合
- 自主管理へのプレッシャー減: 規制が国際条約で義務化されなければ、各国は各自の判断で資源管理を進めるしかありません。乱獲が進んでいる地域では、資源回復が遅れるリスクが残ります。
- 持続可能性への取り組み: 一方で、規制が見送られたからといって、問題が解決したわけではありません。市場側(消費者や飲食店)が「持続可能な方法で獲られたウナギ」を選ぶ動きが、今後一層重要になります。
未来を見据えた展望:消费者の選択肢が未来を変える
12月5日の最終投票で、この提案が完全に却下されるのか、あるいは修正案が提出されるのか、まだ不透明な部分はあります。しかし、確かなことは一つです。ウナギの資源問題は、一度の会議で解決するような単純な問題ではないということ。
今後注目すべきポイント
- 国内資源の回復策: 日本国内でも、河川環境の再生や、人工的なふ化・育成技術の向上など、資源を増やすための努力が不可欠です。政府や自治体、研究機関の動きが注目されます。
- サステナビリティ(持続可能性)の認証: 今後、養殖方法や捕獲方法が環境に配慮したものであることを示す「認証ウナギ」が、より一層価値を持つようになるかもしれません。
- 代替食の台頭: 価格高騰が続けば、消费者がウナギ以外の食材(