フレイル
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フレイル予防の重要性が高まる中、地域と企業の新たな取り組みが注目される理由
超高齢社会が目前に迫る日本。その中で、健康な状態と要介護状態の間の「虚弱状態」であるフレイルを予防するための動きが、社会全体で加速しています。単なる加齢による衰えだと見過ごされがちなこの状態に、医療関係者や自治体、そして企業が本腰を入れて取り組み始めているのです。
見逃されやすい危険なサイン…医師が警鐘を鳴らす「短期間での急激な変化」
「かかりつけ医でも見逃しやすい」と指摘するのは、医師の和田秀樹氏です。プレジデントオンラインの記事によれば、和田氏は「1~2カ月で急激な変化があったら要受診」と強く説いています。
例えば、これまで普通にできていたことが急にできなくなった、急に疲れるようになった、体重が急激に減ったなど、短期間での変化は大きな健康被害の前兆である可能性があります。特に、高齢者にとってこうした変化は、フレイルへと繋がる重要なシグナル。本人も家族も「ただ年のせい」と甘く見てはいけない、という警示です。
地域社会の動き「フレイル予防フェス」としての画期的なイベント
このように、医療現場での注意喚起と並行して、地域レベルでの予防活動も活発化しています。
宮城県名取市では、ミヤギテレビの報道にあるように、「フレイルに関する知識や予防策を学ぶイベント」が開催されました。このイベントは、単なる講演会に留まらず、地域住民が楽しみながらフレイルについて学べる場として構成されています。この背景には、単に病気を治すだけでなく、健康な状態を長く保つ「健康寿命の延伸」を目指す自治体の強い意志があります。
また、横浜市健康福祉局も、中区・西区・南区を対象に「フレイル予防フェス」を開催。タウンニュースの報道にあるこのフェスは、介護予防だけでなく、美容や趣味、交流といった楽しい要素を組み込むことで、参加者の意欲を高めています。
企業と自治体の連携…民間活力を取り入れた予防策の進化
近年、フレイル予防の取り組みは、行政主導から、民間企業の技術やノウハウを活用した連携型へと変化を見せています。
特に注目されているのが、介護リハビリテックのRehabによる「オンライン・AIを活用した新たなフレイル予防」の実証実験です。愛知県大府市や稲沢市で行われているこの試みは、高齢者宅にオンラインでアクセスし、AIを駆使して運動や生活習慣をサポート。地理的制約や移動の困難さを解消し、手軽にフレイル予防を始められる環境を整えようとしています。
一方で、美容の分野からアプローチする試みも登場しました。株式会社ミライプロジェクトが運営する「介護美容研究所」は、横浜市と連携協定を締結し、フレイル予防フェスに出展。メイクやネイルケアといった「美しさ」を通じて、高齢者の自信や生き生きとした気持ちをサポートする活動を行っています。これは、身体的な機能回復だけでなく、精神的なウェルビーイングを重視した新しい予防策として注目されています。
フレイルとは?その概念と「要介護」への移行を防ぐ重要性
このように社会的な関心が高まる「フレイル」。一体どのような状態を指すのでしょうか。
一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会や健康長寿ネットなどの情報によると、フレイルは「加齢により心身が老い衰えた状態」であり、健康な状態と要介護状態の中間段階と定義されています。筋力の低下(サルコペニア)、活動量の減少、認知機能の低下、栄養状態の悪化などが複合的に絡み合うことで、要介護状態へと移行しやすくなる危険性を秘んでいます。
かつては「虚弱」と訳されていましたが、2014年に日本老年医学会によって「フレイル」という学術用語として提唱された背景には、単なる衰えではなく、「介入によって状態を改善できる可能性がある」という認識が広まったことがあります。つまり、フレイルは「治す」のではなく、「予防」したり、元の健康な状態に戻ったりすることが可能な段階であるというわけです。
フレイル予防の具体的な方法と今後の展望
では、具体的にどのようにフレイルを予防していけばよいのでしょうか。先述のRehabの実証実験や、各地で開催されているフェスの内容からも伺えるように、主な予防策としては以下のようなものがあります。
- 適度な運動・筋トレ: サルコペニア(筋肉量の減少)を防ぐための筋力トレーニングや、バランス運動。
- 栄養バランスの取れた食事: タンパク質をしっかり摂取し、筋肉の材料を作る。咬む力を保つための食事も重要。
- 口腔機能の維持: 歯の健康は、咀嚼能力、さらには認知機能や全身の健康と深く結びついています。
- 社会との関わり: 対人交流や趣味の活動は、精神的な活力を保ち、活動量を維持する励みになります。
これからの超高齢社会における戦略的重要性
フレイル予防は、個人の健康寿命を延ばすだけでなく、社会全体の経済的負担を軽減する意味でも極めて重要です。
2024年度の社会保障給付費は138兆円に上り、GDPの約22%を占めるというデータも示す通り、日本の社会保障制度は逼迫しています。その中で、フレイルを予防し、要介護状態となる人数を少しでも減らすことができれば、莫大な医療費・介護費の削減につながります。
そのため、イオンやキユーピー、マルタマフーズなど、10社以上の民間企業が共同で「フレイル予防座談会」を開催し、社会全体でどう取り組むべきか議論を深めている背景には、この社会保障費の問題があるのです。
終わりに:「100年時代」を生きるための鍵
9万9763人に上るとされる日本の百寿者。単に長生きするだけでなく、100歳まで元気でいられる「健康寿命の延伸」が、これからの時代のテーマです。
フレイルは、突然訪れる病気や老いではなく、誰にでも兆候があり、そして予防可能な段階です。医師の和田秀樹氏が指摘するように、まずは「1~2カ月での急激な変化」というサインを見逃さないこと。そして、横浜市や名取市のような地域のイベント、あるいはAIやオンラインといった新しい技術を活用して、自身に合った予防策を見つけることが、豊かな老後を生きるための第一歩となるでしょう。
今後も、自治体と民間企業の連携、そして技術革新による予防策の進化に、引き続き注目が集まっています。
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