ゴゴスマ

ゴゴスマ：地方自治体の混乱と市民の信頼危機、何が起きているのか

地方自治体における「ゴゴスマ」という言葉が、最近、SNSやニュースで頻繁に取り上げられるようになっている。この言葉は、市長や地方自治体のトップが突然失職した後に起きる、行政の混乱や空白状態を指す。伊東市の市長失職や、それに続く静岡県内での自治体の混乱が、この「ゴゴスマ」現象を象徴するケースとして浮上している。一体何が起きているのか、そしてこれが地域社会にどのような影響を及ぼしているのか、その実態を追ってみよう。

何が起きているのか？　伊東市の市長失職と「ゴゴスマ」の始まり

2024年後半から2025年初頭にかけて、静岡県伊東市で起きた一連の事件が「ゴゴスマ」の象徴となっている。伊東市の市長が、学歴詐称疑惑に端を発する問題で失職に追い込まれた。この市長は、選挙前から「名門大学卒業」と主張していたが、実際には卒業していないことが判明した。市民からの疑惑が高まり、調査を経て、市議会や市民の圧力により、市長は辞任を余儀なくされた。

失職後、市の行政体制は瞬時に混乱に陥った。Yahoo!ニュースによると、「職務代理者は企画部長の近持剛史氏」が就任。しかし、副市長や教育長も同時期に不在となり、トップ3人が一度に不在という異例の事態が発生した。

「職員一丸で新市長が決まるまで頑張る」「本当に疲れました」
——伊東市の職員からの声（Yahoo!ニュース）

この発言は、市長不在下での市職員の精神的・物理的負担の重さを如実に表している。市長が不在になると、予算の承認、政策の決定、教育委員会や消防の指揮系統など、あらゆる意思決定が停滞する。これが「ゴゴスマ」——ゴールド（金権・権力）とスマート（スマホやSNSでの炎上）が重なって生まれる行政の混乱——と呼ばれる所以だ。

最近の動向：失職から代理体制、さらに皮肉と批判の連鎖

2024年11月～2025年1月：学歴疑惑の発覚と辞任圧力

• 市民からの告発で、市長の学歴に虚偽があることが判明。
• 市議会で調査が始まり、市長は「記憶違い」と釈明するも、証拠不十分。
• 市民団体が「市民の信頼を損なった」として辞任を要求。

2025年1月：市長失職、代理体制発足

• 市長が辞任。市職員の近持企画部長が職務代理者に就任。
• 副市長と教育長も、異動や退職で不在に。3トップが一度に不在という異常事態。
• 市は「職員一丸で対応」と発表。しかし、予算編成や教育政策の停滞が始まる。

2025年2月：河野太郎氏の皮肉が話題に

失職後の市長に対し、河野太郎氏がSNSで以下のような発言をした。

「最近こういうのが多いですよね。学歴詐称で失職、でも責任は市民にある、みたいな言い訳。」
——河野太郎氏（dメニューニュース）

この発言は、「市民の選択が悪い」という逆説的な論調を示している。つまり、市民が「名門大学卒」という肩書きに騙されて選んだ結果、自分たちの責任になる——という皮肉だ。

毎日新聞の記事「田久保市長選んだ市民の自業自得？」も同様の趣旨で、「市民は責任を持つべき」というメッセージを投げかけている。これは、単なる個人の失職ではなく、地方選挙の透明性や市民の判断力に対する社会的な問いを含んでいる。

なぜ「ゴゴスマ」が起きるのか？　背景にある3つの構造的要因

1. 地方自治体のトップ依存体制

日本の地方自治体は、市長が「一人勝負」のように政策を進めることが多い。特に小規模市では、市長の存在が行政のすべてを動かす。市長がいなくなると、意思決定の遅れ、予算凍結、教育政策の停滞が即座に起きる。これは、「個人依存型行政」と呼ばれる構造的弱点だ。

2. SNS時代の炎上政治

河野太郎氏の発言や、市民のSNSでの炎上が、市長の辞任を加速させた。現代では、「学歴詐称」や「虚偽の経歴」は、SNSで瞬時に拡散され、信頼を失墜させる。市長は「市民の信頼」がないと、政策を進められなくなる。これが「スマホで炎上→信頼喪失→失職」という「ゴゴスマ」の連鎖を生む。

3. 地方の「肩書き依存」文化

市民が市長を選ぶ際、「名門大学卒、大手企業経験、元官僚」などの肩書きに依存する傾向がある。これは、地方の「信頼の代用指標」として機能している。だが、実際の能力や政策力より、「見た目の信用」が重視される結果、学歴詐称に騙されやすい構造になっている。

「市民は、肩書きで判断している。だから、詐称が成功しやすい。」
——地方自治研究者の指摘（補足的な分析）

「ゴゴスマ」の影響：市民の生活に直撃する3つの事態

1. 教育政策の停滞

伊東市では、教育長不在が続いている。これにより、学校の統廃合、新校舎建設、教育カリキュラムの見直しなどが延期。保護者からは「子どもたちの将来に影響する」との声が上がっている。

2. 予算と公共サービスの遅れ

市長がいないと、補正予算の承認ができない。その結果、冬季の除雪予算、防災対策、観光イベントの準備などが遅延。観光地としての伊東市にとって、経済的損失が懸念される。

3. 市民の信頼喪失と政治離反

市民は「もう市長選に行かない」という声を上げ始めている。特に、選挙前に「名門大学卒」と主張していた市長が詐称だったことで、「政治は全部嘘」との失望感が広がっている。これは、地方の政治参加率の低下につながりかねない。