レアアース
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レアアース危機再来か:中国規制で浮上する新たな供給リスクと各国の動向
世界のハイテク産業を支える「レアアース」。その供給網に再びひびが入り始めています。中国による輸出規制の強化を受けて、特にイットリウムなどの不足懸念が浮上。2025年11月の Reuters 報道を皮切りに、再び深刻なサプライチェーンリスクが叫ばれています。
かつてない規模の半導体不足やEV(電気自動車)ブームの最中、レアアースを確保出来ないことは、技術立国・日本にとって死活問題です。本稿では、最新のレアアース危機の内幕と、その未来を左右する各国の戦略を深掘りします。
中国の「切り札」、輸出規制の背景
「レアアース」と聞いても、その希少性よりも「中国の独占供給」というイメージが強い方もいるでしょう。事実、世界のレアアース供給の6割以上を中国が支配しており、この構造が度々問題視されてきました。
最新の動きでは、中国側が「国家安全保障」を理由に特定のレアアース鉱物の輸出規制を強化。特に、高性能モーターに不可欠な「ネオジム」や、EV・風力発電所のタービンに使われる「ジスプロシウム」に加え、イットリウムの不足が懸念されています。
Reuters(2025年11月17日)は、「中国輸出規制でイットリウムが不足、新たなレアアース危機に懸念」と報じ、国際市場での価格高騰と供給不安が視野に入り始めたことを伝えています。
これは単なる貿易摩擦ではなく、次世代産業を支配しようとする地政学的な駆け引きと見られています。
日本社会の反応と「脱中国」への叫び
国内では、この危機感が広がっています。Yahoo!ニュースのコメント欄などでも、「レアアースの中国依存からの脱却を急ぐべき」「環境負荷やサプライチェーン再構築が課題」といった声が上がり、注目を集める事態に。
特に日本は、電子部品や精密機器の製造に長けていますが、その原料の多くを海外に依存しています。仮にレアアースの供給が止まれば、自動車産業や家電産業、そして半導体産業に深刻な打撃が走る可能性があります。
Yahoo!ニュースの記事では、「環境負荷やサプライチェーン再構築が課題」と指摘。単に輸入先を変えるだけでなく、リサイクル技術の向上や、環境に配慮した国内採掘の再開が急務であることが示唆されています。
代替供給源の模索:トルコと豪州の動向
中国依存を脱却するため、世界各国が代替供給源の確保に動いています。
その中で注目されているのが、トルコです。日経新聞の報道によると、トルコ西部でレアアースの巨大鉱床が発見されました。ここにはレアアースだけでなく、战略的鉱物である「ジルコニウム」も含まれており、その埋蔵量は世界有級レベルと言われています。
しかし、問題は「技術」です。採掘そのものは可能でも、鉱石から純度の高いレアアースを分離抽出する精錬技術は、圧倒的に中国が優位に立っています。トルコ側もこの点を認識しており、海外(日本や欧米企業など)への技術要請を視野に入れているようです。
日経新聞(2025年頃の記事参照)は、「トルコでレアアース巨大鉱床、海外に技術要請」と伝えています。ここに日本企業の技術力が活きれば、新たな供給網「中国・トルコ・日本」の構築も夢ではないかもしれません。
※参考:オーストラリアやカナダ、アメリカでも新規鉱山の開発が進んでいますが、環境規制や現地住民との調整など、課題は山積みです。
危機の波及効果:EV市場への影響
レアアース不足が直撃する産業の最前線は、間違いなくEV市場です。
EVのパワートレイン(動力源)であるモーターは、高出力・小型化を実現するため、ネオジムなどのレアアース磁石を多用します。特にハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、そして最近流行のBEV(電気自動車)の走行距離を伸ばすには、高性能磁石が不可欠です。
もしレアアース価格が暴騰、あるいは供給が絶たれれば、EVや家電製品の価格が値上がりするのは避けられません。その結果、普及のペースが鈍り、脱炭素社会への移行にもブレーキがかかるリスクがあります。
日本の戦略的選択肢:技術力とリサイクルで切り込む
では、日本はこの危機をどう乗り越えるべきか。3つのポイントが考えられます。
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次世代技術の開発(脱レアアース): レアアースに代わる素材の開発や、使用量を大幅に削減するモーター技術の研究が進められています。
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都市鉱山(マイニング)の活用: スマートフォンや家電廃棄物からレアアースを抽出する「リサイクル」です。日本は廃棄物から有用金属を抽出する技術に長けており、これを産業化する動きが加速しています。
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国際的なサプライチェーンの再構築: トルコや豪州、カナダなど、中国以外の鉱山開発に日本が技術協力し、安定供給を確保する「経済安全保障」の観点からのアプローチです。
まとめ:二度と「安易な依存」は許されない
2025年現在、レアアース問題は単なる原材料不足ではなく、国家の安全保障を左右する一大イベントへと発展しています。
Reutersが指摘するイットリウム不足や、Yahoo!ニュースで議論されているサプライチェーン再構築の必要性、そして日経が伝えるトルコの巨大鉱床——。これらの情報を総合すると、日本政府と企業には「待ったなし」の局面にあると言えます。
安価な中国製品に依存し続ける時代は終わりました。技術力と戦略的な投資で、脆弱な供給網を強固なものに変える。その決断と実行が、日本の未来を左右する鍵となるでしょう。今後の動向を、油断なく見守っていく必要があります。