玉鷲

玉鷲、40歳の壁と熱戦の数々…九州場所での惜敗が示す「大相撲の神髄」とは

大相撲の九州場所が行われた福岡国際センター。その土俵を、40歳という年齢でなお熱戦を繰り広げた力士がいます。その名は「玉鷲（たますずめ）」。豊昇龍（ほうしょうりゅう）大関との熱い戦いは、惜敗に終わったものの、その姿は多くのファンに深い感動と「大相撲とは何か」を改めて問いかけるものとなりました。

本日は、大相撲のベテラン力士・玉鷲の今に迫るため、九州場所での出来事を中心に、その歴史的な意義、そして今後の展望について、最新のニュース情報に基づいて詳しく解説します。

九州場所の熱戦：40歳、大関との死闘

2025年11月16日、九州場所8日目。この日の白星の行方は、玉鷲にとって運命の日となりました。相手は、横綱・大の里を追う大関・豊昇龍。最高位横綱経験者（元大関）である玉鷲と、現在の三役の雄との対決は、土俵を包む熱気を一気に高めていました。

試合は瞬く間に決着。豊昇龍の鋭い出足と寄り切りに対し、玉鷲は最後まで粘りましたが、土俵際での攻防の末、惜しくも敗れ去りました。

毎日新聞の記事では、「豊昇龍に惜敗」と簡潔に伝えられていますが、その裏側には、40歳の力士がいかにして現役のトップランカーと渡り合ったかという、並大抵ではない努力が隠されています。

この敗戦は、玉鷲にとってこの場所での3敗目。連勝のストップだけでなく、40歳の壁の厚さを痛感させる結果となりました。

その並み外れた耐久力：歴史が証明する「玉鷲の強さ」

この惜敗の裏側で、玉鷲が持つ「単なるベテランではない」という事実があります。それは、彼の幕内出場回数に端的に表れています。

圏外からの復活、そして歴史的一歩

玉鷲は、一度は十両に陥落した経験もあります。しかし、それだけではありません。彼は一度の陥落後、見事に幕内に復帰を果たした数少ない力士の一人です。この「再起」の強さが、彼の最大の武器であり、ファンを魅了するポイントでもあります。

魁皇に並ぶ快挙

特に注目すべきは、その「耐久力」です。Yahoo!ニュースの記事によれば、玉鷲はこの九州場所で、歴代2位となる1444回の幕内出場を達成しました。これは、大関・魁皇（かいこう）と並ぶ記録です。

「玉鷲善戦『横綱をヒーヒーさせた』魁皇に並ぶ幕内出場歴代2位1444回」

これは、単なる数字ではありません。長年にわたり、最高水準の舞台で勝ち続け、現役を続けた証です。その記録を更新するたびに、土俵に立つ彼の姿は、大相撲の歴史そのものを見ているかのようだと言えるでしょう。

名古屋場所の雪辱と、九州場所での対決

玉鷲と豊昇龍の対戦は、単なるこの場所の対戦だけではありませんでした。スポーツ報知の記事は、両者の過去の対戦に言及しています。

「連覇を目指す大の里がストレートで勝ち越し 単独首位堅持 名古屋場所で苦杯を喫した玉鷲に勝利」

これにより、玉鷲が名古屋場所で豊昇龍に敗れた（苦杯を喫した）という事実が判明します。つまり、この九州場所での対決は、玉鷲にとって「雪辱」の機会でもあったのです。雪辱を期して臨んだ勝負が、僅差の惜敗に終わる。その悔しさと、それでも前に進む姿勢が、40歳の力士の矜持を物語っています。

40歳の現役力士が社会に与えるインパクト

近年、大相撲では「高齢力士」の活躍が話題に上がることが増えました。しかしそれでも、40歳を過ぎてなお三役（大関・関脇・小結）クラスの力士と互角に渡り合うことの意味は極めて大きいです。

継承と激励

玉鷲の存在は、若手力士にとって大きな目標となります。年齢を重ねても、技術と精神力で若い力士に勝るとも劣らない、あるいはそれ以上の戦いができる。その姿は、大相撲が「若さ」だけではない魅力（テクニック、根性、知恵）を持つ場であることを示しています。

ファンの熱狂

40歳の力士が白星を重ね、好成績を残す時、ファンの感情は大きく揺さぶられます。「頑張れ」という声が全国から湧き出るのは、努力を認める日本人の国民性と、玉鷲の愛嬌のある人柄（彼の四股名「玉鷲」の愛らしさも手伝って）も一役買っているようです。

玉鷲の今後：衰えを知らぬ強さはどこまで行くか

この九州場所での惜敗は、玉鷲の限界を示すものではなく、逆に「まだやれることを示す」結果となったかもしれません。

残りの場所での課題

この敗戦で、玉鷲はこの場所での勝ち越しが微妙な位置に立たされました。しかし、彼の強さは「粘り」にあります。残りの日程でも、彼がどのような相撲を取るか、その一挙手一投足が注目されます。

来季以降の展望

40歳を超えて現役を続けるには、怪我のリスクと体力の維持が最大の課題です。しかし、彼がここまでの記録（幕内出場1444回）を築いてきた事実は、彼がその課題を克服する方法を知っている証拠でもあります。

今後、彼が記録を更新し続けるか、あるいは若手の壁となれるか。その姿は、大相撲の新たな歴史を刻むことになるでしょう。

まとめ：玉鷲の土俵に見る「大相撲の醍醐味」

九州場所8日目、玉鷲は豊昇龍に惜敗しました。しかし、その敗戦は彼の価値を決して下げるものではありませんでした。むしろ、40歳の年齢で、大関クラスと渡り合ったその姿こそが、大相撲の真髄であり、ファンが心底「好きだ」と思える所以（いわれ）です。

歴史的な記録と、現在の熱い戦い。その両方を兼ね備えた力士、玉鷲。彼の次なる相撲に、目が離せません。