宇良

宇良の関脇昇進と「関関戦」──その実力と今後の行方を徹底分析

大相撲の世界で、名古屋場所が行われる夏から秋にかけて、最も熱い注目を集めていたのが、新関脇・宇良（うら）の躍進である。初日から4連敗を喫し、一時は関脇の地位が危ういと見られた宇良が、わずか数日でその逆境を跳ね返し、土俵を制したのは、実に印象的な劇的な展開だった。その半面、八番相手は、同じ関西学院大学出身で、昨年暮れに新入幕を果たした安青錦（あおしき）との「関関戦（かんかんせん）」。この、学閥を超えた因縁の対決に勝利した宇良の今後に、大相撲ファンの視線が集まっている。

劇的な逆転劇──新関脇宇良が見せた「勝ちへのこだわり」

宇良の今場所の幕開けは、まさに波乱の連続だった。大関・豊昇龍（としょりゅう）との初日から、新大関・琴ノ若（ことのわか）ら強豪との壁は厚く、初日から4連敗。関脇の地位は、勝ち越しが最低条件とされる中で、大変なピンチに立たされた。

しかし、宇良はここで屈しなかった。6日目、対戦相手は同じく新入幕で、昨年11月場所で初日から10連勝と好調を極めた安青錦。この土俵には、ただの新入幕同士の対戦以上の意味が込められていた。宇良は、この勝負を制し、連敗を脱すると、その後も快調に星を伸ばし、13日目には大関・豊昇龍をも下す大金星を挙げ、12勝3敗の好成績で場所を終えた。

この成績の裏側には、九重審判長（元大関・千代の富士）が指摘した「必死さ」がある。九重審判長は、宇良が初日から4連敗を喫した後の立ち合い変化について、「必死さがあった」と語っている。これは、ただ勝ちたいというだけでなく、地位を守り、そして上位へ進むための執念が、土俵に如実に表れていたことを示唆している。宇良のこの粘り強い闘いは、単なる星取りだけでなく、彼の精神力の強さをも証明する結果となった。

「関関戦」とは何か？──安青錦との因縁の対決とその背景

6日目の勝負が特に注目されたのは、相手が安青錦だったからだ。両者は、ともに関西学院大学の出身という共通点を持つ。宇良は自身が入学はしていないが、在学中から関西学院大学相撲部の稽古に参加し、その実力を磨いた。一方、安青錦は同大学の卒業生である。この「関関戦」は、単なる同世代の対戦を超えて、大学の誇りを懸けた「同門対決」とも呼べる位置づけがあった。

この勝負について、宇良は「自分は入学していないので、関関戦という意識はなかった」と語っている。しかし、その言葉とは裏腹に、土俵上の熱気は尋常ではなかった。実際、この勝負は、両者の执念がぶつかり合う激しい攻防となり、最后は宇良が巧みに相手の懐に潜り込み、押し出しで勝利を納めた。

この勝利は、宇良にとって単なる連敗脱出の意味だけでなく、自身の出自を知る者との対戦に勝つことで、自信を深める結果となった。安青錦も、昨年11月場所の初日から10連勝という快進撃で新入幕を果たした実力者であり、その彼を下した宇良の勝利は、大相撲ファンにとって「新進気鋭の二人が、新たな対決の火蓋を切った」という印象を残した。

宇良の経歴とそのポテンシャル──新関脇の底力

宇良は、1994年（平成6年）11月2日生まれ、兵庫県出身。身長179cm、体重170kgの体格は、近年の力士としては小柄な方だが、その動きの速さと、相手の重心を崩す巧みな技量が武器である。彼の最大の強みは、何と言ってもその機動力にある。小兵ゆえの俊敏性を活かした攻めは、上位力士相手にも通用し、大関昇進の可能性も秘めている。

彼の関脇昇進は、2024年11月場所が初めてだったが、この場所での12勝は、自身のキャリアハイを更新する成績となった。もともと2023年5月場所で自己最高位の小結に昇進し、その場所で8勝7敗と勝ち越して関脇の土俵を tecrübe している。しかし、その後はやや停滞気味だったが、今場所での大健闘で、確固たる地位を築きつつある。

安青錦との関関戦に勝利した背景には、宇良の「大学相撲」へのこだわりもある。彼は、関西学院大学相撲部での練習を通じて、プロの世界に通用する技術と精神力を身につけた。関西学院大学相撲部は、近年でも複数の関取を輩出しており、その実績は侮れない。宇良は、その「大学相撲の底力」を体現する存在として、今後も期待されている。

九重審判長の見解と今後の展望

九重審判長は、宇良の立ち合い変化について「必死さがあった」と評価した。これは、単に勝負にこだわったというだけでなく、地位を守るための切実な思いが伝わったという意味だ。大相撲の上位陣では、わずかな失敗が、地位の降格につながる。特に新関脇にとっては、勝ち越すことが絶対条件となる。

宇良は、この場所で12勝3敗という成績を残したことで、来場所以降も関脇の地位を維持する可能性が高まった。彼の今後の課題は、この「必死さ」を、常に維持し、さらに磨きをかけることだろう。また、大関昇進には、継続的な二桁勝利や、大関・横綱相手の勝利が必要不可欠だ。今場所で豊昇龍を破った実績は、彼のポテンシャルを証明した。

一方、安青錦も、宇良との対戦を経て、自身の課題を痛感したはずだ。新入幕を果たした彼も、今後は関脇・小結の壁を乗り越え、さらに上位へ進む必要がある。二人の「関関戦」は、今後も見どころのある対戦カードとして、ファンの間で語り継がれるだろう。

大相撲の「大学相撲」勢の台頭とその意義

宇良と安青錦の対決は、単なる二人の力士の対戦以上の意味を持つ。それは、大相撲における「大学相撲」出身者たちの台頭を象徴する出来事でもある。

かつて、大相撲の主流は、各地の相撲道場から入門する力士たちだった。しかし、近年では、日本体育大学や日本大学、そして関西学院大学など、大学相撲の強豪校からプロ入りする力士が増加している。彼らは、学生時代に徹底